関税の米企業負担の業界格差「衣料品90%・自動車77%・家具3%」、FRBがインフレより雇用重視で利下げ再開の理由ドナルド・トランプ米大統領は25日、輸入セミトラックに 25%、浴室用洗面化粧台およびキッチンキャビネットに50%、布張り家具に 30%の関税を課す一連の新たな関税措置を発表した(写真はカリフォルニア州のIKEAで) Photo:Justin Sullivan/gettyimages

インフレより雇用重視で利下げ再開
関税の価格転嫁、想定以上に緩やか

 9月16、17日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、事前に予想されていた通り、0.25%Ptの利下げが行われた。

 FOMC後の会見で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、FRBの責務である「物価の安定」と「雇用の最大化」のうち、トランプ関税によって物価には上振れリスクがあり、雇用には下振れリスクがあるが、後者の雇用の下振れリスクがより高まったために、労働市場のさらなる悪化の「リスク管理」として利下げを行うと説明した。

 背景には、関税引き上げのコストの消費者物価への転嫁が想定以上に緩やかに行われたことがある。

 筆者の試算では、関税の負担を企業が利幅圧縮などで負った自動車や衣料品などと、販売価格への転嫁が進んで家計が負担を負った家具など、商品や業種によって明確に分かれており、これが、全体としては価格転嫁が緩やかになった要因だ。

 こうした企業の価格戦略を考えると、今後も、財の物価がどこかの時点で急騰する可能性は少ないとみられる。一方で企業にとっては、今後も半導体や医薬品などの高率関税賦課の可能性がある中で不透明感が残り、その結果、解雇が増えるなどの雇用のリスクは払拭されないだろう。

 9月FOMCで示されたFOMC参加者の金融政策の見通しでは、2025年末までにあと2回の利下げを見込む参加者が9人に対して、これ以上の利下げは困難と考える参加者も7人と、先行きの見方については大きく分かれている。

 だが、現状ではインフレ加速で消費が大きく減退するなどの懸念は薄らいだこともあり、FRBは労働市場に配慮して、年内2回程度の追加利下げを行う公算は大きい。