「オペマネの思考法」を解説するシリーズの第6回目。今回はものづくり企業のサービス価値創造の後篇として、サービサイジングというこれからの日本の製造業のキーワードを概説する。神戸大学経営学研究科SESAMIプログラムで、サービサイジングの授業を担当していただいたウォートン・スクールのモーリス・コーヘン先生の講義録をもとに、売り切りのビジネスモデルから、ものを介して、サービス価値を提供するモデルへ移行する意義と、そこでどんなノウハウが必要となるかを解説する。

 サービサイジングとは、製造業が従来のものを売るだけの売り切りビジネスモデルから、製品を介したサービス価値提供のビジネスモデルに移行することをいう。マクドナルドのようなファーストフード店が急成長した過程で、サービス業であるレストランが、製造業におけるような製品の標準化、効率を追及したアプローチを適用したことをサービスのプロダクタイゼーションということがあるが、その双対にあたるコンセプトである。

 サービサイジングは別に新しいコンセプトではない。私が受講した1979年のMITスローンスクールのピンダイク先生のミクロ・マクロ経済の授業で、ポラロイドは、インスタント・カメラを低価格で提供しているが、フィルムの販売で定常的なキャシュ・フローを得ているというプライシングの講義を聞いた覚えがある。最近の例だと、コピーのプライシングが典型的なものであろう。ものであるコピー機自体は高くはないが、補充部品であるトナーは高くつき、使用頻度に応じて継続的に支払っていく必要がある。

サービサイジングと経営環境

 サービサイジングが日本の製造業にとって重要な意味を持つようになってきたのは、経営環境の変化のためである。ビジネスのグローバライゼーション、製品のコモデティ化、サステイナビリティ。こういう潮流に対応するために、サービサイジングということを真剣に考える必要がある。

 ウォートン・スクールのコーヘン先生に授業を担当していただいた神戸大学経営学研究科のSESAMIプログラムを、「オペマネの思考法」の実践の事例として紹介する。このプログラムは、私がディレクターをしているのだが、研究教育環境のグローバル化に対応して、海外の多数の研究教育機関と戦略的連携をする現状維持ではない新しい研究教育プロセスとなっている。