将来への危機感が原動力となり行動したBさん

 一方のBさんは、祖父や父親の影響を受け、機械系の高校から念願の機械設計職に就きました。彼の転職の動機は、Aさんとは対照的に現状への強い不安からでした。

  Bさんの会社は近年業績が悪化し、設計業務の量が徐々に減少。業務量が少ないことに加えて、規模が大きくない会社だったこともあり、機械の据え付けや組み立てなどの設計以外の仕事も手伝わねばならない状況になっていました。

 Bさんは、20代後半というキャリア形成において最も重要な時期に「このままでは設計のスキルを磨いていくことは難しい」と感じ、現状に強い不安を覚えます。スキルアップの停滞と将来への危機感が、Bさんを転職活動へと突き動かしたのです。

視野の拡大と「理想の働き方」の再認識

 転職活動に不安があったBさんは、まず「切羽詰まった状況で動く前に、これまでのスキルや経験を整理し、市場価値を知るため」にエージェントに登録しました。先輩からの後押しやキャリアアドバイザーからの「内定をもらっても入社するかどうかは自由」という言葉に励まされ、活動に踏み出します。

 活動を通じて、年間休日数や始業時間などさまざまな企業の待遇を知り、多様な働き方があることを知ることで自らの視野が広がったと語ります。またキャリアアドバイザーによる面接対策を受ける中で、自分では気づけなかった改善点を教えてもらえたことは、第三者の視点を得る上での大きなメリットにもなりました。

 最終的にBさんが選んだ転職先は、彼の希望である機械設計の仕事ができるだけでなく、年収も380万円から420万円へとアップ。通勤時間も短縮されるという、理想的な条件に合致した企業でした。

余裕のあるうちに「動く」こと 

  転職先の化学メーカーでは、半導体の品質や製造効率に関わる装置の設計に携わることになり、設計職としてさらにスキルアップできる環境を手に入れました。また、営業との打ち合わせから社内検査まで一貫して携われる点にも魅力を感じています。

 Bさんの事例が教えてくれるのは「気持ちや状況に余裕があるうちに、将来の不安やキャリアについて第三者に相談してみるのがよい」ということです。現状に危機感を抱くことで、実際に仕事の状況が悪化する前に行動を起こしたことで、結果的に希望の条件をかなえることにつながりました。現職と並行しての転職活動には精神的な疲れもありましたが、将来への不安を解消するために「先手」を打ったことが、彼をより良い環境へと導いたのです。