Photo by Takayuki Miyai
活況なオフィス需要を背景に、好業績に沸くデベロッパー業界。その中で、選択と集中で東京都港区を中心にオフィスや外資系ホテルを手掛けるのが森トラストだ。特集『総予測2026』の本稿では、伊達美和子社長に、業界に横たわる建設費用の高止まりという課題にどう向き合うのか、日中関係悪化に伴うホテル事業への影響をどう見通しているのかを問うた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
需要過多で好立地オフィスは空室率1%
でも建設費高騰で投資計画ままならず
――2025年は都心のオフィスの空室率が3%程度にまで低下するなど、オフィス回帰の動きが森トラストの業績に追い風となりました。訪日観光客数も右肩上がりで、森トラストが手掛ける外資系ホテルの利用者数も大幅に伸びました。
当社が手掛けるオフィス、ホテル、分譲住宅の3事業はいずれも好調で、当初の予測を全て上回っています。オフィスマーケットを見れば、延べ床面積が1万坪以上で好立地にあるAクラスビルの空室率は1%程度。東京都心のオフィスで見ても2%台となっており、空室率は以前より低下している状態です。
新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務が浸透した21年6月ごろには6%程度だったことを踏まえると、数年でV字回復することができました。
――そんな中での課題は?
まずは、人手不足です。訪日外国人の増加でホテルの需要がある一方で、どのエリアにあるホテルも働き手を確保することに苦労しています。
そして一番の課題は、建設費用の高騰です。賃貸オフィス、ホテル、分譲住宅それぞれ需要がありますが、次の投資を計画する際には建設費の高騰を踏まえて考えねばなりません。この10年間で建築費の指数が約30%上昇しているというデータもあります。現実にはそれ以上に上昇しているといえる状態の中で、各セクターそれぞれ建設費高騰を吸収できるよう付加価値を上げるにはどうしたらいいか常に考えなければいけません。企画は何度も何度も練り直しています。
――来年のオフィス市況はどうなると見通していますか。
高市早苗首相の台湾有事に関する発言を受け、中国人観光客が急激に減少する中、森トラストの手掛ける外資系ホテルにはどれくらい影響が出ると分析しているのか?次ページでは、日中関係悪化に伴う業績の見通しと、伊達社長が高市政権に求める建設業界の改革案について話しを聞いた。







