海上保安庁の砕氷巡視船「そうや」。ジャパンマリンユナイテッドが建造した。(写真提供:ジャパンマリンユナイテッド)
造船業が一躍脚光を浴びている。日米合意に基づく対米80兆円投資に日米の造船所の能力強化が含まれ、日本政府の重点投資分野にも造船が指定された。10年間で日本国内の建造量を倍増させるため、官民による“1兆円基金”も動き出した。特集『総予測2026』の本稿では、日本の造船業が規模で勝る中国・韓国勢に対抗する勝ち筋を詳述する。日米合意に基づく巨額投資は、日本の造船業の停滞を打破するカンフル剤になるのか。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
今や日本の造船の世界シェアは1割強
再興のラストチャンスか
2026年は日本の造船業が復活できるかどうかが問われる正念場になりそうだ。日米合意に基づく対米80兆円投資には、日米の造船能力強化が含まれた。同時に、官民投資の“1兆円基金”で、日本国内の生産能力を倍増させる計画を実現できるかが“造船復活”の焦点となる。
かつて日本の造船業は世界シェアの4割近くを占めていたが、中韓の台頭で競争力を失い、産業のひのき舞台から姿を消して久しかった。
建造量は2000年度に韓国に抜かれて世界トップから陥落し、09年度には中国に抜かれた。24年度は日本のシェアが12%まで落ち込んだ一方で、中国が50%を超えた。
反転攻勢の鍵になるのが官民による“1兆円基金”である。35年までに、造船会社17社でつくる日本造船工業会と政府で計1兆円規模の投資を行い、建造量を倍増させる計画だ。
屋根を付ける全天候型の設備や溶接に用いるロボット、鋼材の切断機を導入して生産性の向上を図る。
確かに、ロボットによる溶接の効率化も重点課題なのは間違いないが、造船業界は根本的な大きな課題を抱えている。それは人材確保だ。
船舶は「ブロック」と呼ばれる構造物ごとに組み立てる。初期段階は屋内で作業することが多いが、全体を組み立てる段階は屋外での作業となる。屋根があるドックは少なく、直射日光と雨にさらされる。船体の中に入れば日差しは遮られるが、夏場は酷暑だ。
国土交通省によると、25年の外国人材を除いた造船業の就労者数は6万2000人超で15年から25%減少している。一方で外国人材は増え続けていて、25年は全体の約7万6000人の2割弱を占めるまでになっている。
造船所は過酷な勤務環境のイメージが強く、特に若い世代から敬遠されがちで、外国人材に依存しているのが現状なのだ。
次ページでは、造船業の復活の鍵について詳述する。人手不足の解消につながる設備投資の秘策とは?米国が日本に求めている特殊船の技術とは?







