これからの時代、何にも興味を持てない人は非常に不利になる。少しオタク気質がある人の方が仕事においても強いのではないでしょうか。

 というのも、「ハマる」ということは、損得抜きで行動できる、面倒なことも苦にならずにできる力があるということ。好きな人のためなら普通は面倒なことでも喜んでやってしまうように、何かに夢中になれる能力は仕事において大きな武器になります。

「ハマれる」ものがあるかどうかは単に趣味の話ではなく、仕事に対する取り組み方の本質的な違いを表しているのです。

 しかも、「ハマる」能力は人工的には作れません。「〇〇にハマっていました」と嘘をついたところで、少し話せばすぐに化けの皮がはがれます。小学生を観察していても、ハマる子とハマらない子は明確に分かれており、もしかしたら、後天的に獲得するのが困難な、才能的な側面もあるのかもしれません。

就活のための「アクセサリー化」で
学習やボランティアが歪む!?

――現在の就活で問題だと思うことはありますか。

 大学では地域連携の一環として、地方自治体が抱える課題を学生が現地に行って解決するというプログラムを実施しています。ある大学では、これは正規の授業でしたが、単位を付与していませんでした。

 学生が相当な時間をかけて真剣に取り組んでいるのだから、他の授業と同様に単位を付与しようと提案したところ、学生たちから猛反対に遭いました。「単位になると、せっかく活動したのにボランティアとして認められなくなる」というのです。

 つまり、彼らは地域貢献や社会課題解決がしたいわけではなく、就活で使える「ガクチカ」のネタ作りのために参加していたのです。

 現代の学生がいかに就活のノウハウに精通し、言葉は悪いですが、「計算高く」行動しているかを如実に示す例だと思います。

――東京オリンピックのボランティアも、「海外の人と交流した」と履歴書に書きたいがために参加した学生が多かったと聞きますね。

 推薦入学が一般化した影響で、全員ではないとはいえ、小学生までもがこのように打算的に行動するようになっています。親も子どのの推薦入学を見据えて、小学校の頃から戦略的に様々なボランティア活動に参加させています。

 能登半島地震の支援活動でさえ、「ガクチカになるから」という動機で参加する学生がいたのは、非常に残念な現実です。

 こういう傾向は、本来の学習や社会貢献の意味を根本的に歪めてしまう。「ガクチカ」のノウハウがあまりにも完成されすぎて、全てが就活のためのアクセサリーでしかなくなっている。