ドル円相場は2026年末「140円」にPhoto:PIXTA

恒例の新年相場たけなわの季節である。2026年の円相場見通しは上下に分かれやすい事情がある。しかし、その確からしさが定まらない、アナリスト泣かせの場面である。米ファンダメンタルズ予想は、底堅さを保てるか、下振れがあるかというリスクバランスで見ている。ただし、米国の景況が同国金利を通じて円相場を動意づかせると、日本市場のリスクは増幅されかねない。市場予想をうのみにせず、情勢をきちんと理解して、相場に臨みたい。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

市場予想をするアナリスト
泣かせに拍車がかかる

 来る新年の経済・市場予想がたけなわとなる師走。ここ数年は毎回、アナリスト泣かせの事情を解説した。そして、2026年へは、さらに輪をかけてアナリスト泣かせになっている。

 米国経済、物価、金利、株価、選挙、あるいは、欧州の経済と地政学、中国の経済、米中および対日関係、東アジア地政学、そして日本の高市政権下の経済政策と景気、物価、金利、株価が、それぞれに上下要因が錯綜し、それらが相互に絡み合っている。

 それでいて、証券会社など金融機関、あるいはフィンフルエンサー(金融投資系インフルエンサー)は、先行き不透明な時ほど、明快な指針を出したがる無邪気な性分がある。それを真に受けて、実際に投資ポジションを取ると、対処困難な無用なリスクになりかねない。

 本稿では、円相場を軸に、見通しが割れる事情を明らかにし、投資の実践的対応を論じる。

 1年という期間で、ドル円相場を想定するとき、最も基本となる変動要因は金利である。国際収支のうち、貿易収支、所得収支など実需に関わる部分は、ゆったり底流で中長期の為替水準に影響するが、1年以内の短中期の相場変動は、金融現象として把握すべき部分が大きい。

 金利に関して、多くの通貨の動向は、その国と米国の金利差で読む。ただし、日本は長くデフレ環境下で、長短金利とも底ばったままだった。このため、この間は米金利水準の変化だけ見ていれば、円相場の動きを大方説明できた。

 しかし、今ここが変調を来している。そこには、投機筋、投資家が金利を指針として動きにくくなった事情が響いている。次ページでは、ここに至った経緯を振り返る。