Photo by Ryuichi Kanayama
伊藤忠、丸紅、住友商事の三大商社が名を連ねる伊藤忠丸紅住商テクノスチールで、元部長による7億円詐欺事件が発覚した。容疑者は丸紅出身で、商社ブランドを「信用の増幅装置」として悪用し、本社応接室を舞台に偽造書類で融資を引き出した疑いがある。だが事件は単なる一社員の逸脱行為ではない。商社再編の成功モデルとされてきたJV(合弁)体制の陰で、誰も正面から向き合わなかった「管理の空白」が明らかになったからだ。連載『クローズアップ商社』の本稿で、商社ブランドの信用を悪用する土壌がなぜ形成され、どの段階で見過ごされたのかを検証する。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
再エネ融資を名目とした詐欺の手口
大手3商社ブランドが「信用増幅装置」に
大手商社グループの鉄鋼商社で、看過し難い不祥事が起きた。警視庁は1月13日、鉄鋼商社の伊藤忠丸紅住商テクノスチール(東京都千代田区)の元土木建材部長、桜井宏至容疑者ら2人を詐欺などの疑いで逮捕した。再生可能エネルギー関連のバイオマス発電所の事業資金を名目に、ソーシャルレンディング事業者から約7億円を詐取した疑いが持たれている。
ソーシャルレンディングは、投資家から集めた資金を事業者に融資し、その返済原資を投資家に分配する仕組みだ。この事件では「大手商社系JVによる連帯保証」という極めて高い信用補完が示されたことで、審査判断に大きな影響を与えた可能性がある。
その結果として、多額の資金が短期間に流れ込む構図が生まれた。容疑者らは2021年末から22年にかけ、偽造した委任状や取締役会議事録を示して金銭消費貸借契約を締結したとされる。実際にはテクノ社が連帯保証を決議した事実はなく、代表印も偽造されていた疑いがある。捜査当局は、被害総額が10億円規模に上る可能性も視野に入れている。
国際的な地政学リスクで先が見えない時代にも成長を続けてきた大手総合商社。その鉄鋼系子会社で起きた巨額詐欺事件で、3商社の看板がそろったとき、何が起きていたのか。次ページで探っていく。







