「助けてほしい」悲痛な叫びから始まった
キャリアの棚卸し

 転機は、限界を感じて登録したリクルートエージェントでの面談でした。

 当時のAさんは、明確なキャリアビジョンを持って相談に来たというよりは、「どうすればいいか分からない、助けてほしい」という切実な思いに突き動かされた状態でした。

 しかし、キャリアアドバイザーとの対話が、Aさんの曇った視界を晴らしていきます。

「Aさんが本当に楽しかった瞬間はいつですか?」

 そう問われてよみがえったのは、幼いころの自分の姿でした。

「そうだ、私は設計がしたかったんだ」

 転職活動を通じて、Aさんは自分の「原点」を取り戻しました。そして、あるラジオ番組の言葉がAさんの背中を強く押します。

「なるようになる人生がいいか、なりたいようになる人生がいいか」

「自分のやりたいことではないけれど、この道でもいいか」と流されていたAさんの心が大きく動いた瞬間でした。

「なるようになる」から「なりたいようになる」へ
封印した夢への再挑戦

 努力の結果、Aさんは見事に希望していた設計職への切符を手にします。

「他の設計士が思いつかないような設計ができる人」になりたい。そう語るAさんの表情に、かつての迷いはありません。

 遠回りをした経験すらも「現場を知っている設計士」としての強みに変え、Aさんは今、自分の足で人生を歩み始めています。

 Aさんの事例が教えてくれるのは、「自分軸(内発的動機)」を取り戻すことの重要性です。周囲の期待や世間体、経済的な事情といった「外発的動機」でキャリアを選択し、息苦しさを感じている方も多いでしょう。

 しかしAさんは「幼少期の原体験」という絶対的な「好き」に立ち返ることで、困難な転職活動を乗り越える原動力としました。

「自分はどうなりたいのか」。シンプルですが、この問いに正面から向き合い「流される人生」を「選ぶ人生」へとシフトさせた意思決定こそが、Aさんの成功の鍵だったのです。