「葉っぱビジネス」の上勝町の隣にも?
悪条件に屈せず地域を自力で活性化する町

 悪条件に屈することなく、地域を自力で活性化させている自治体が全国にいくつか存在する。その代表的な存在の1つが、前回紹介した「葉っぱビジネス」の徳島県上勝町だ。

 その上勝町の北隣りに、急速に知名度を上げている自治体がある。「芸術と文化による地域再生」を進める神山町である。ITベンチャー企業などの呼び込みに成功し、全国の自治体関係者らの注目を集めている。その手法を知ろうと、神山町にも各地から視察が殺到している。

 神山町と上勝町は隣接する自治体だが、互いの間に1000メートル以上の山々が立ち並ぶ。神山町は鮎喰川沿いに集落が広がり、上勝町は勝浦川沿いにできた町。2町を隔てる山々を越す道路はあるが、行き来は容易ではない。2町は隣り合っているものの、生活圏を全く異にする自治体であった。

 徳島駅前から路線バスに乗り込み、揺られながら約1時間。山々に囲まれた神山町の中心部に降り立った。真っ先に目についたのが、大きな鳥居。そして、青い空と山の緑。

 集落を澄み切った静寂が覆い尽くし、まるで別世界に足を踏み入れたかのように感じられた。これまでにあまり味わったことのない感覚だった。後で知ったことだが、神山町には邪馬台国の卑弥呼にまつわる古寺や旧跡が多数、存在する。

 スダチの生産量日本一を誇る神山町は、人口6240人(2013年4月現在)。過疎化により、ピーク時の3分の1まで激減している。町の財政力指数は0.22しかなく、山間部にある典型的な過疎自治体と言える。

 そんな神山町に、まさかの現象が次々に起きている。東京のITベンチャー企業など計9社が空き家を借りてサテライトオフィスを開設するなど、町外からの移住が目立つようになったのである。2011年度に人口が初の転入超過(12人)となった。