Photo by Yoshihisa Wada
世界ナンバーワンの投資銀行で、日本で50年超の活動実績があるゴールドマン・サックス。日本法人を長年率いた持田昌典氏の退任後、名門M&A部隊のかじ取りを任されたのは、投資銀行部門共同部門長に昨年就任した高鍋鉄兵氏だ。長期連載『金融インサイド』内の特集『インベストメントバンカー M&A請負人の正体』の#3では、日本企業が劇的な変革期を迎える中、新司令塔が描く新たな成長戦略、そして前例のない人員増強の全貌を明らかにする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
世界ナンバーワンの高みを目指す
ポスト持田時代の新たな成長戦略
――高鍋さんは2025年8月に投資銀行部門の共同部門長に就任しましたが、日本で50年以上の歴史を持つゴールドマン・サックス(GS)のM&A部隊を率いる司令塔として、どのようなチームをつくり上げたいとお考えですか。
GSはM&AやECM(エクイティ・キャピタル・マーケッツ:株式引き受けなど)において世界ナンバーワンの組織ですので、日本でもその高みを目指したい。そのための成長戦略が鍵になります。
この仕事を26年近くやってきて、今ほど日本が世界から注目されているのは初めての経験ですし、正直こんな時代が来るとは思いませんでした。
日本法人社長に24年に就任した居松(秀浩氏)やグローバルのリーダーシップともよく話しますが、とにかく「グロース(成長)していこう」と。その成長を支える強靭な組織をつくりたいですし、社員にとって働きがいがある魅力的な組織にしていきたい。
――高鍋さんは2000年入社で、キャリアのほとんどが持田昌典前社長時代と重なっています。M&Aの第一人者である持田氏からさまざまな教えを受けた「持田チルドレン」の一人ですか。
正確に言うと、私が持田の本当の直下になったのは12~13年ごろからです。それまではキャピタル・マーケッツを担当していました。13年からカバレッジを兼務し始め、いわゆるアドバイザリーの直属チームに入ってからは十数年ですが、本当にさまざまなことを教えていただきました。
今でも定期的にお会いして教えを請うています。世の中に「持田チルドレン」という言葉があるかは知りませんが(笑)、あるとするならその通りです。
――持田氏から受け継ぎ、次世代につないでいきたい「教え」とは何でしょうか。
あの人は不世出の傑物なので、まねは絶対にできません。私がすべきなのは、持田が残した日本におけるブランドやフランチャイズを次世代につなぐことです。
持田の何がすごかったかというと、ジャッジメントです。いつ、どこでお客さまにどのようなアドバイスをするかという判断力。そしてお客さまに寄り添う姿勢です。
キャラクターの強い方だったので、世界中の誰からも愛されるという方ではなかったんですけれども、故西川善文さん(元三井住友銀行頭取)のような日本を代表する経営者と強固な関係性を築いていました。それがなぜできたのかは正直よく分かりませんが、関係性や信頼関係を築き、お客さまに寄り添う姿勢はぜひつなげていきたい。
もう一点はグローバルとの連携です。持田は日本人として初めてグローバルの経営委員会のメンバーに上り詰め、組織を動かしてきました。グローバルのリソースとリーダーシップを日本にコミットさせ、日本の発展につなげる。リーダーとしてこれが最も大事な役割だと考えています。
――その持田氏が23年に社長を退任した後、業界ではGSに対し「世代交代の過渡期にある」「次の方向性が見えない」といった声が聞かれます。こうした外野の声についてはどう思われますか。
何を言われているのかぜひ聞いてみたいところですが、正直あまり気にしていません。正しいこと、お客さまのためになること、今求められていることをやるだけです。その上でこの半年から1年の間に具体的にやり始めたことが三つあります。
「GSは世代交代の過渡期にある」。競合他社からのそんな視線を高鍋氏は一蹴し、GS内部で進める改革を明かした。その要諦は、持田氏個人のカリスマ性に依存したスタイルから、全社を挙げた「攻め」の組織へのパラダイムシフトにある。次ページで、日本市場の劇的変化を読み解く「五つの巨大な変化」と、GSの新たな成長&人材戦略の正体に迫る。







