インベストメントバンカー M&A請負人の正体#5Photo:Bloomberg/gettyimages

2025年のM&Aリーグテーブルで競合を大きく引き離し、最大手の存在感を見せつけた野村證券。その実績の派手さや「野村は高年収」というイメージとは裏腹に、実は投資銀行部門の待遇が「トップ」というわけではない。取材で判明した職位別給与レンジを比べると、投資銀行部門の年収水準でSMBC日興証券が野村を上回っていることが分かった。長期連載『金融インサイド』内の特集『インベストメントバンカー M&A請負人の正体』の#5では、外資系投資銀行の年収レンジとも照らし合わせ、中堅層で外資への人材流出が止まらない“必然”を数字で浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

野村の待遇はSMBC日興を大きく下回る
その実態を職位別年収レンジで徹底比較

 2025年、日本企業が関与するM&Aの取引総額(ランクバリュー)は51.1兆円超と過去最高を更新した。2000年代初頭から3倍以上に拡大した市場は、かつてない活況を呈している。

 この巨大市場で、25年のリーグテーブルを圧倒したのが野村證券だ。累計取扱額は同社史上最高の23兆円超に達し、前年首位の三菱UFJモルガン・スタンレー証券からトップの座を奪還。シェア45.3%と、国内最大手の貫禄を見せつけた。

 これだけの実績に加え、「野村=高給」というイメージがある以上、所属するインベストメントバンカーも他社を凌駕する報酬を手にしていると思うかもしれない。

 しかし、実態は大きく異なる。

「国内大手証券の中で、野村の投資銀行部門(IBD)の年収は決して高くない」

 野村IBDのOBがそう明かす通り、取材で判明した野村と、同じ日系であるSMBC日興証券の職位別給与を比べると、野村がSMBC日興の年収をはるかに下回っていることが分かった。野村の華やかなディールの陰で、現場社員の待遇は“王者”にふさわしい水準とは言い難いのが実情だ。

 待遇の伸び悩みは人材流出に直結する。ここ数年、野村IBDからプライベートエクイティー(PE)ファンドや総合商社の他、外資系投資銀行への流出が相次いでいる。その上、足元では外資系投資銀行が内々に野村用の採用枠を設け、野村IBDの若手・中堅の上位層を狙い撃ちしているのだ。

 次ページでは、野村、SMBC日興、そして外資系投資銀行の職位別給与レンジを具体的な数字で比較する。野村IBDの年収がSMBC日興を大きく下回る実態や、その一方で高騰する野村の役員報酬から、IBDの若手・中堅社員が去るべくして去る“必然”を明らかにしていく。

図表:野村證券投資銀行部門の出世の仕組みと実際の待遇(サンプル)