富裕層必見!資産防衛&節税術Photo:PIXTA

不動産投資を考える際、投資家の多くは「条件の良い物件を選びたい」「有利に購入したい」と思いがち。しかし、情報が広く共有される現代、そのような“掘り出し物”はごく一部の例外を除いて、ほぼ存在しないのが実情だ。連載『富裕層必見!資産防衛&節税術』の第23回では、運に左右されない投資物件の探し方を指南する。(有栖川アセットコンサルティング代表 鈴木子音)

“例外”を前提にした物件探しは
かえって利益を失いかねない

 筆者が不動産投資について相談を受ける中で、よく聞かれるのは、「良い物件がなかなか見つからない」という嘆きの言葉です。

「条件の良い物件を選びたい」「少しでも有利に購入したい」――これはごく自然な感覚であり、多くの不動産投資家が同じように考えます。その気持ち自体は当然のことでしょう。しかし、あえて少し厳しい言い方をするならば、そうした意味での「良い物件」や「割安な物件」は、ごく一部の例外を除いて、ほとんど存在しないというのが実情です。

 もちろん、立地や建物の状態、収益性といった観点から見て、「条件が良い物件」「条件が劣る物件」という差は確かに存在します。ただし、その差は市場の中で常に評価され、それに応じた価格が付けられています。立地が良ければ価格は上がり、収益性が高ければ利回りは低下する。この関係は極めてシンプルであり、実務の現場では驚くほど正確に機能しています。

 とりわけ現在のように情報が広く共有される社会環境においては、この市場原理はより一層徹底されています。つまり、「誰にとっても良い上に割安な物件」というものは、原理的に成立しにくくなっているのです。もちろん、特殊なゆがみや個別の事情によって、一時的に価格と価値のバランスが崩れる局面が存在しないわけではありません。しかし、そうした“例外”を前提にして物件探しをしてしまうと、判断の軸そのものが不安定になってしまいます。

 それにもかかわらず、どうしても「どこかに割安な物件があるはずだ」と考えてしまいます。ここで一度、自身の経験を振り返ってみましょう。何かを探す際に、「もう少し良い条件があるのではないか」と感じた経験は、一度や二度ではないのではないでしょうか。

 過去に偶然うまくいった経験や、他者の成功事例に触れることで、「いつか必ず自分にも見つかるはずだ」という感覚を強めていきます。しかし、そうした成功体験の多くは、特定の条件やタイミングが重なった結果であり、再現性のあるものではありません。

 実際の相談でも、「もう少し良い条件の物件があるのではないか」と考え続け、判断を先送りしているうちに、判断のよりどころそのものを見失ってしまったというケースは、残念ながら少なくありません。特に不動産は個別性が極めて高く、完全に同一条件で比較できる対象が存在しないため、検討を重ねるほど判断基準が曖昧になりやすいという側面があります。

 例えば、立地や築年数が似通っている物件であっても、入居者層や管理状況、将来の修繕計画によって、実際の運用結果は大きく変わってきます。その結果、比較検討を続けるほど判断は難しくなり、最終的には「どれを選ぶべきか分からない状態」に陥ってしまうのです。

 さらに、その間にも市場は確実に動いていきます。検討していた物件は他の投資家に取得され、金融環境や価格水準も変化していきます。判断を先送りすることは、一見すると慎重な姿勢のようにも映りますが、時間の経過とともに選択肢を減らしていく行為でもあります。とりわけ近年は、税制改正のスピードも非常に速くなっています。数年前まで有効とされていた手法が、短期間で見直されるケースも珍しくありません。

 このような環境においては、「もう少し様子を見る」という判断そのものが、大きな機会の喪失につながる危険性があります。そうした意味でも、これまで以上に判断のスピードが問われる局面に入っているといえるでしょう。

 資産規模が大きくなるほど、この問題はより重要になります。資産形成の初期段階では「いかに増やすか」という視点が中心になりますが、一定の水準を超えると、不動産に求められる役割は変わっていきます。収益を追い求める“攻めの投資”から、大切な資産を守るための“守りの投資”へ。この変化を受け入れることが、長期的に資産を維持し、次世代へと受け継いでいく上で欠かせない視点となります。

 では、具体的にどのような考え方を持って物件を検討すべきなのでしょうか。次ページで見てみましょう。