note解剖#3Photo:imagenavi/gettyimages

財務省が新たな発信ツールとしてnoteの活用を始めるなど、法人や官公庁の参入が相次ぐ一方、更新が途絶え放置される企業アカウントの「死屍累々」とした現状も浮かび上がっており、月額8万円の「note pro」の導入をためらう企業も多い。博報堂など大手広告代理店も参入し拡大を続ける「note経済圏」は、単なる一過性の流行を超えて持続可能なビジネスインフラとして定着できるのか。長期連載『メディア興亡』内の特集『note解剖』#3で、その真価を問う。(フリーライター 松田晋吾)

カルビー「開発の神様」が起こした奇跡
バズを呼ぶストーリーとストックの力

 「崖っぷちからの再起!『クリスプ』を救った“筒から袋”への進化」「発売30周年『じゃがりこ』が世界へ挑戦中!」

 スナック菓子大手・カルビーのnote公式アカウント「THE CALBEE」には、ヒット商品の開発秘話や社員の思いが読み物のように並ぶ。2021年3月の開設以来、月2~4本ペースで積み上げた記事は200本超に達した。

 その中に、今も語り継がれる一本がある。21年6月公開の「ピザポテト誕生秘話」だ。

 公開当初は静かな滑り出しだった。ところが9カ月後、突然Xで拡散。約24万件の「いいね」を集める異例の反響を呼んだ。バズの火種は記事の中身ではなかった。取材対象である執行役員・研究開発本部長(当時)のプロフィールに「堅あげポテト」「ア・ラ・ポテト」の開発者でもあることが記されており、インターネット上で「開発の神様」とたたえられたのだ。メディアの取材も相次いだ。

 THE CALBEE担当者はこう強調する。「noteはコンテンツがストックされるので、価値を積み重ねることを大切にしている。時間がたっても読んでもらえる、普遍的なテーマを意識している」。

 スナック菓子の「開発秘話」が、なぜ公開から9カ月後に突然SNSで爆発的な反響を呼んだのか。そこには、情報の鮮度がすぐに失われるフロー型のSNSとは決定的に異なる、noteならではの「ストック型メディア」としての強みがある。

 カルビーが体現したこの成功体験を求め、今や法人・官公庁までもが続々となだれ込む。しかし、その華やかな成功の裏側では、月額8万円を投じながらも「書くネタがない」と沈黙する企業の実態も広がっていた。

 2%未満しか有料プランを選ばないシビアな現実。その先に、果たして「ビジネスインフラ」としての勝機はあるのか。次ページで明らかにする。

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月額8万円の有料版が直面するシビアな現実とは?

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