文部科学省管轄の財団法人である日本相撲協会は8日、緊急理事会を開き、大麻検査で陽性反応が出たロシア力士二人(幕内力士の露鵬=大嶽部屋と十両の白露山=北の湖部屋)の解雇処分と、北の湖理事長の辞任を決めた。
北の湖理事長の辞任については「やっと辞めたか」という感想だ。自分からあっさり辞めたがる総理大臣がいるかと思えば、もうとっくに辞めたほうがよかったのに辞めなかった理事長もいる。何れも、困ったものだと呆れ返るほかない。
今回の大麻問題の事実経緯を押さえておこう。9月2日に相撲協会が抜き打ちの尿検査(ドーピング検査)を行い、そこで露鵬と白露山の二人に大麻の陽性反応が出た。その後、協会は精密検査も実施したが、そこでも二人の結果は陽性と出た。今回の精密検査を依頼された「三菱化学メディエンス」は世界反ドーピング機関(WADA)の唯一の国内検査機関である。直接吸ったのか、副流煙(タバコの先から立ち上る煙)なのかも判別でき、鎮静剤など他の成分と間違うこともまずないと言われている。
精密検査では、尿をAとBの検体に分け、A検体の調査結果に不満がある場合は、B検体での調査を要求できる。露鵬は、A検体で“クロ”と出たわけだが、B検体の検査を拒否しており、正規のドーピング検査の流れに従って、A検体での検査結果が確定した。白露山については、まだ態度がはっきりしていないが、今の段階では、大麻の吸引を強く否定している。むろん露鵬も同様に大麻吸引を否定している。
露鵬も白露山も、使用を認めれば、相撲が取れなくなることは、同じロシア出身の若の鵬のケース(大麻所持で逮捕)で分かっていただろう。本当のことを言っている可能性も完全には否定できないが、嘘を言うインセンティブは強力に存在する。
この問題の処理は難しい。露鵬と白露山がある程度以上の信頼性を持つ検査で大麻に関して陽性と出たことは事実で、このことは重く受け止める必要があるが、先般の若の鵬の場合と異なり、現段階では、大麻吸引の証拠も当人の自白も無く、事実の上でも法的にも、クロが確定したわけではない。
一方、大相撲秋場所の開催は9月14日に迫っており、前提条件に不確実性がある中で、どのような処置をすべきかというのがこの問題の本質だ。敢えて説明すると、スポーツのレベルの問題と法的なレベルの問題を峻別しつつ、ビジネスとしての大相撲を守る意思決定と行動が必要だ。