金融DX大戦#5Photo by Takeshi Shigeishi

信金中央金庫がNTT東日本と共同開発した、法人向け「しんきん法人ポータル」のサービス提供を今秋にも始める。信用金庫の取引先に対し、資金繰り管理やバックオフィス業務のデジタル化を支援する機能があり、日本の課題でもある中小・零細企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が一気に進む可能性がある。特集『金融DX大戦』(全22回)の#5は、信金のDX戦略を明らかにする。

「実はDXのポテンシャルが高い」?
信金中央金庫幹部が明かす三つの優位性

 中小企業や地域住民の協同組織として、金融サービスを行うのが信用金庫だ。全国254の信金が約7100店舗を持ち、155兆円の預金量を擁する。

 各信金が営業を行うのは一定の地域に限られ、中小・零細企業の経営者らとの対面接点を強みとすることから、主にマスリテールで力を発揮するDXとは一見すると無縁に思える。

 だが、信金中央金庫の須藤浩副理事長はこう語る。

「実は信金のようなビジネスこそが、DXのポテンシャルが高いのではないか」

 英ロンドンの信金インターナショナル社長などを歴任し、グローバル金融機関がDXに取り組む様を目の当たりにしてきた須藤氏は、数年前まで「DXの意識すらなかった」という信金を一気に変貌させようとしている。

 実際、信金はどの金融機関よりもDXが加速度的に進む優位性を備えているかもしれない。その三つの理由を解き明かしていく。