外食バトルロイヤル:ゼンショー創業者小川賢太郎氏Photo:JJI

ゼンショーホールディングスの会長の小川賢太郎氏が4月6日、死去した。小川氏は東京大学中退後、吉野家を経て、1982年にゼンショーを設立。すき家やはま寿司など自社ブランドの開発にとどまらず、数々の外食企業を買収し、一代で日本最大の外食企業をつくり上げた。ダイヤモンド編集部はゼンショーが上場外食企業で連結売上高日本一になった約15年前に、小川氏を直撃している。短期間で事業規模を急拡大させるために、小川氏はどのような緻密な戦略を練っていたのか。「週刊ダイヤモンド」2010年8月14・21日号の小川氏のインタビューを再掲する。(ダイヤモンド編集部)

※「週刊ダイヤモンド」2010年8月14・21日号のインタビューを基に再編集。肩書や数値などの情報は雑誌掲載時のもの

すき家の価値を熱弁
「全然わかっていない」

――激化する牛丼3社の価格競争は、消耗戦に陥っていませんか。

 全然わかってないですね。すき家が属すファストフード業態では、バリュー(価値)というものを消費者に提供している。これは業態が変わっても普遍的であるかもしれないけれども、特にこの業態では、価値における価格の比重が大きいと考えています。

 われわれはマス・マーチャンダイジング・システム(MMD)といっていますが、それには背景となる原材料の調達から、加工、物流、そして店舗でのオペレーションシステムまで、いかにムダなく・ムラなく・無理なく、ローコストで回す仕組みをつくれるかが重要になります。それらがあって初めて低価格でいい商品を、安定的に消費者に提供できる。

 われわれはすき家において、一貫してそれらを追求してきた。日々改善改革を続けてコスト競争力を高めてきたし、3種のチーズ牛丼など、業界で先鞭をつけてさまざまな商品開発を行い、牛丼というカテゴリーをよりリッチにしてきた。そうして消費者の支持を増やし、新たなマーケット開拓をしてきた歴史と自負があります。

 もちろん価格に対する中身も問われます。われわれが昨年12月に330円から280円に新価格を設定したときは、コメはコシヒカリ100%にし、タレも肉もグレードアップさせました。肉のグレードアップは2年くらいかけて準備した。ただ単に安くすればいいのではないという考え方を大事にし、“安かろうよかろう”ということを、身をもって示した。これが支持されたと考えています。

――相次ぎ行ったM&Aはゼンショーを水ぶくれさせただけではないでしょうか。

 ゼンショーというとM&Aという人が多いんだけど、この5年間で1484億円投資したうち、1195億円は直営店1600店の出店に使っている。直営店の出店のほうが成長の原動力として大きいというのが実態なんですよ。

 自社での業態開発もしています。ただ、ほかが開発した業態でも壁にぶち当たったり、成長させていくにはわれわれみたいなMD(商品政策)力を持った会社がやったほうがいいだろうとなったりすることはある。

 例えば、華屋与兵衛は、オーナーだった清水信次さん(ライフコーポレーション会長)が、「ここから先は従業員のためにも会社のためにも、外食のプロに任せたほうがいいだろう」という判断をされて、われわれにお話がきた。

――しかしM&Aはうまくいかないことも多いです。

 ゼンショーはなんでも食っちゃってる印象があるかもしれないけど、実は案件に対するM&A成立率は3%くらい。企業全体の店舗立地に始まって、業態としての特性、将来性、人についての評価などを厳格にやっています。そしてわれわれの仕組みや人材などとジョイントすることでシナジーを生むものだけを買っている。だから成功確率が高い。

――ゼンショーは「1秒間に2歩以上歩かねばならない」など、超体育会系のイメージがあります。

 本当いうとね、僕はいわゆる体育会系っていうのは嫌いなんですよ。もう大嫌い。

古くから体育会のイメージがあるゼンショーHD。しかし「体育会系は大嫌い」とダイヤモンド編集部の取材で語っていた。同氏が体育会を嫌う理由とは?また、売上高日本一になったゼンショーHDの成長余地をどのように予見していたのか?当時から語っていた壮大な計画を垣間見る。