国内の銅鉱山開発が絶えて久しい中で、南米のチリで初となる日系企業100%出資の銅鉱山が生産を開始した。その意気込みを聞く。

JX日鉱日石金属社長 足立吉正 <br />チリのカセロネス銅鉱山開発で<br />「鉱山+製錬所」へと原点回帰Photo by Shinichi Yokoyama

──ようやく、2006年5月に権益を取得した「カセロネス銅・モリブデン鉱床」(カセロネス銅鉱山)で商業生産が始まりました。

 この3月中旬から、「電気銅」(電気分解で得られる高純度の銅地金)を生産しており、10~12月中には「銅精鉱」(銅製錬に使う原料。電気銅の前段階)の出荷を始めます。4月に現場に行ってきたばかりですが、工事の進捗は予定通りで、開発費も大きくぶれることはなさそうです。14年中には、フル生産に移行できるでしょう。

──カセロネス銅鉱山は、向こう28年間の生産を予定しています。

 この権益は、カナダの鉱山開発会社から買い取ったものですが、当初の計画では電気銅の生産だけを考えていました。ところが07年に詳細な調査をした結果、地中深くに「硫化鉱」(銅・ニッケルなどの金属と硫黄が結合した鉱石)が豊富に眠っていることが判明しました。当初の2倍近い分量の銅鉱石やモリブデンが採れることから、計画自体を変更・拡大しました。

 権益比率は、パンパシフィック・カッパー(JX日鉱日石金属が66%、三井金属鉱業が34%出資した合弁会社)が75%、三井物産が25%となっています。“日の丸権益100%”というのは、非常にレアなケースだといえます。

──権益を取得した06年当時より銅の価格が3~4倍になったこともあり、大規模開発が進められるという“追い風”も吹きました。

 最終的に、大規模開発となったことから、最初は20億ドル(約2000億円)で考えていた開発費は、30億ドル(約3000億円)にまで膨れ上がりました。その際、10億ドル(約1000億円)の追加投資が可能だったのは、10年4月にJXホールディングス(持ち株会社)が発足していたからでした。

 ほかにも、さまざまな要因に助けられた部分は否めません。今? とても買えませんよ(苦笑)。