金融インサイド#11三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規社長(左)と三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取 Photo:JIJI

三菱UFJフィナンシャル・グループが、2026年の新体制移行へ動きだそうとしている。亀澤宏規社長の後任には、三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取が就く公算が大きい。焦点は空席となる銀行頭取ポストだ。その最有力候補に加え、さらにその先の「次々期」頭取候補も浮上。国内最大の金融グループのトップに上り詰める王道出世に「新条件」が加わりつつあることを、長期連載『金融インサイド』の本稿で明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

亀澤社長が吐露した王者の危機感
不祥事で生じた「空白の1年」に何が?

「今、銀行は圧倒的に1番ですけれど、毎年の新規口座開設数はインターネット銀行の方が多い。このままデジタルの変化に手をこまねいているだけでは、やはりだんだん基盤が細っていく」

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規社長は2025年8月、ダイヤモンド編集部の取材にそんな危機感を吐露した(『三菱UFJが“横作戦”で三井住友オリーブ追撃へ、亀澤社長が激白した「危機感」と次代を託す「後継者」の正体』参照)。

 三菱UFJ銀行の個人預金口座数は、国内最大規模の約3400万口座を誇る。だがデジタル化に対応しなければネット銀行などへ預金が流出し、強固な顧客「基盤」が弱体化しかねない――。亀澤氏の焦燥はそこにある。

 実際、MUFGは6月に新金融サービス「エムット」を始動。アプリを起点にグループのカードや証券を横断的につなぎ、ポイント経済圏を新たに構築した。さらに26年には独自のデジタルバンクを立ち上げ、経済圏の中枢に位置付ける戦略を掲げる。

 その亀澤氏は今、任期6年目。傘下の三菱UFJ銀行頭取、半沢淳一氏は任期5年目だ。異例の任期の長さは、24年に発覚した店舗内貸金庫事件とファイアーウォール規制違反にある。本来予定されていた25年度のトップ人事は見送られ、内部統制の強化が優先された。

 だが、その「空白の1年」の間も政権交代の下慣らしは着々と進められ、複数あったトップ人事シナリオは1本に絞られつつある。

 それを読み解くキーワードは、亀澤氏が言う「デジタル」、そして「王道回帰」だ。次ページで次期頭取、次々期頭取候補の実名を明らかにする。