Photo by Yoshihisa Wada
トランプ関税や中国による日本への渡航自粛など、不確実性が増す2026年、日本経済をどう見通すか。特集『総予測2026』の本稿では、三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取に、日本銀行の追加利上げや為替の行方に加え、金融サービス「エムット」を起点としたデジタルバンクと相続プラットフォーム、米OpenAIとの連携を柱とするリテール戦略を3段階で進める構想について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
日本経済は底堅い回復がメインシナリオ
25年末~26年初の利上げも「相応にある」
――2026年の日本経済をどう見通していますか。
足元の日本経済は、物価高が個人消費の重荷となっている一方、高水準の企業業績を背景に設備投資は堅調で、全体としては緩やかな回復基調にあります。
今後は日本を含む各国の通商交渉の進展に加え、設備投資や人的投資の拡大を通じ、人手不足を背景に賃上げは続くと考えています。インフレ率も低下基調にあることから、実質賃金は徐々に改善していくでしょう。
さらに高市政権による大型の経済対策も下支えし、日本経済は底堅い回復基調を維持する。これがメインシナリオです。
ただし日本にとっては、高関税が続くトランプ関税の影響は、今後一段と鮮明になります。通商合意は成立したものの、その運用はこれからであり、関税率の追加引き上げの可能性も否定できません。
加えて中国の日本への渡航自粛措置が長期化したり、エスカレーションしたりするリスクにも注視が必要です。国内外の政策運営や通商動向は、引き続き注意深く見ていく必要があります。
――日本銀行は追加利上げに踏み切るでしょうか。
日銀の基本スタンスは、経済・物価の見通しが実現に近づくのに応じて利上げを行うというもので、そこは変わっていません。
賃上げやインフレの推移、高市政権の政策が経済にどう影響するかを見極めながら、利上げのタイミングを探る状況が続くのではないでしょうか。あくまで日銀の専管事項ですが、個人的には25年12月や26年1月にも追加利上げの可能性は相応にあると考えています。
――26年の為替はどうみていますか。
ここ数年、海外金利の上昇と内外金利差の拡大を背景に歴史的な円安局面が続いてきました。
一方、足元では日米金利差縮小の観測が強まり、本来は円高要因が働きやすい環境にあります。
それにもかかわらず円安方向に振れているのは、米国の利下げペースが想定より遅いとの見方や、日本の利上げペースも鈍いとの見方に加え、高市政権の財政拡張姿勢を市場が財政悪化リスクと受け止め、円安要因として意識しているためです。
中長期的には日米金利差の縮小を背景に円高方向を想定していますが、当面は円安方向に振れやすい展開が続く可能性があるとみています。
――そのような経済見通しの下で、三菱UFJ銀行はどのような役割を果たしていきますか。
次ページでは、26年以降に三菱UFJ銀行が進めるリテール戦略“3段階”の構想について、半沢頭取に詳しく聞いた。







