FX(外国為替証拠金取引)業界が揺れている。2月1日、アイフォレックスが登録取り消し処分を受け、1月末には三菱商事フューチャーズがFX事業を譲渡、またフォーランドフォレックスは、新規注文の受付を停止したうえ顧客に建玉縮減を要請するという異例の事態に陥った。

 2月1日から、FX業者に対し、顧客から預かった証拠金の「全額信託保全」が義務づけられた。従来、顧客の証拠金を会社の資金と分けて管理する「区分管理」が義務づけられていたが、今後はその管理方法が、信託銀行への金銭預託のみに限られる。業者は資金力、信用力をいっそう問われることになったのだ。

 特に「カバー取引先への預託」ができなくなったのは大きい。FX業者は、カバー先の銀行などとの取引に際し、自身も取引量に応じた保証金を積まねばならない。その一部に顧客資金を充てているところが多かったのだが、規制により自己資金や新たに銀行から信用枠を確保するなどして、別途全額準備せねばならなくなった。

 また銀行などから債務保証状を出してもらいカバー先に差し入れる「LG」を使っていた業者も、顧客資金を担保にしていた場合、スキームの変更を迫られた。フォーランドフォレックスは「1月初頭から建玉が急増した結果、保証金が不足」したとしているが、業界関係者によれば、11月頃にはカバー先とのLG契約が無効となることがわかっていたにもかかわらず、対応が遅れ今回の事態を招いたようだ。

 撤退・廃業が続出するとの事前の予想に比べれば震度は小さいとも思えるが、安心はできない。

 規制をクリアした業者でも、“ギリギリ”の場合が多いと見られている。また金融情勢の変化から、カバー先の銀行が保証金率を引き上げる動きもある。FX業者は、大手でも資本金が数十億円である一方で、預かり資産は数百億円規模のところが珍しくない。「今は大丈夫でも、急な相場の変動などで顧客のポジションが偏ったり、カバー先が保証金率を引き上げてきた場合、資金繰りがつかなくなる可能性がある」(田原祐介・TSS社長)。つまりは、財務上は黒字でも、事業が立ち行かなくなる業者が出てくるというのだ。

 さらに、今年8月にはレバレッジ規制が始まり、全体の取引量減少が不可避だ。FX業界の淘汰・再編はこれからが本番である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)

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