SWIFT「ブロックチェーン台帳」が突きつける国内金融機関の危機、日本の金融資産が海外“オンチェーン”に流れる日Photo:123RF

銀行間の国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)は7月9日、ブロックチェーン基盤の共有台帳を稼働させ、三菱UFJ銀行を含む世界17行とトークン化預金を使ったクロスボーダー(国際)決済の実証実験を開始したと発表した。世界の銀行を結ぶ既存金融の中核インフラが、ブロックチェーンを自らの基盤に組み込み始めたことになる。SWIFTによるこの動きは、金融資産がどの国の台帳の上で循環するかを奪い合う競争の号砲である。日本の金融機関が出遅れれば、日本で保有される資産を金融仲介に生かす力が失われることになる。(経済ナビゲーター 村田雅志)

SWIFTがブロックチェーン台帳を始動
17行が実取引の試験へ

 SWIFTが公開したブロックチェーン基盤の共有台帳は、参加銀行が自社システム上で発行したトークン化預金を安全にプールできる共通プラットフォームとして機能するよう設計されている。最終決済は引き続きSWIFTの既存ネットワークと従来の決済レールを通じて行われるが、トークン化預金に対応するプラットフォームが用意されることで、従来では対応できない週末や夜間を含め、24時間365日の資金移動が可能となる。

 SWIFTのネットワークは現在、世界200超の国・地域で1万を超える金融機関を結んでいる。その中核インフラがブロックチェーンを取り込むことは、「オンチェーン金融」がもはや暗号資産業界だけの試みではなくなったことを示している。

 銀行、証券会社、運用会社、市場インフラそのものが、金融資産をブロックチェーン上で発行し、移転し、決済する体制へ移り始めている。

オンチェーン金融が変える
資産の“置き場所”

 オンチェーン金融とは、預金、債券、株式、投資信託、不動産などの権利をトークンとして表し、ブロックチェーンや分散型台帳上で管理・移転する金融の仕組みである。ここで言うオンチェーンは、誰でも匿名で参加する暗号資産のネットワークだけを意味しない。金融機関が管理する台帳や、規制されたネットワーク同士の接続も含む。

 従来の金融取引では、資産の所有記録、売買注文、資金決済、本人確認、担保管理が別々のシステムに置かれている。銀行、証券会社、取引所、清算機関、カストディアンが情報を受け渡し、残高を照合して初めて取引が完了する。

 一方、オンチェーン金融では、資産と資金の記録を同じ、または相互接続された台帳上で連動させられる。これにより取引時間が延びるだけではなく、決済、担保差し入れ、権利移転、資金再投資を連続して処理することが可能となる。

 つまりオンチェーン金融の本質は、金融商品のデジタル化ではなく、金融資産がどこに記録され、どこで流動性を得て、どこで次の取引に使われるかという“資産の置き場所”が変わることにある。