止まらない福島への移住欲
内心もやもや……
他方、ウイスキーへの興味はますます高まるばかり。多忙の合間を縫って、ウイスキーの歴史や文化を学び、各種のセミナーにも積極的に参加した。
「こうなると、ウイスキー関連の仕事で福島に移住できれば、それがベストですよね。都庁での仕事も充実していましたけど、ずっと心の中にもやもやしたものを抱えていました」
そこで阿部さんは転職エージェントに登録し、ウイスキー関連の求人情報に目を光らせるようになる。そして1年半ほど経ったところでついにヒットしたのが、天鏡蒸溜所の情報だった。
「一も二もなく飛びついて、すぐに申し込んでみると、早速その翌週にオンライン面接がありました。そして翌日には採用の連絡をいただいて……。まだ上司に退職の相談もしていないのに、一気に話が進んでしまったんです(笑)。これが2024年の8月、僕が36歳の時でした」
猪苗代湖からほど近い、天鏡蒸溜所。
福島でウイスキーの仕事に就くという、何物にも代え難いチャンス。人生における一大転機だが、迷いは一切なかった。
そのとき胸中には、都庁職員らしくこんな課題意識もあったという。
「都の仕事をしていて常々痛感していたのは、東京に人が集中し過ぎている現実です。本来は地方が盛り上がってこその東京であるはずですが、魅力ある地域から人がどんどん流出し、衰退していく様子をもったいなく感じていました。福島出向はそうした過剰な偏りを肌身で感じる、いい機会でもありました」
だからこそ、地方を盛り上げることに貢献したい。ウイスキーはまさに、そのための手段でもあったわけだ。







