侵攻前にロシア株を縮小
現地情報で地政学リスクを回避

――ロシアによるウクライナ侵攻への対応が機敏だったそうですね。

嘉嶋 2022年2月の侵攻以前、割安だったロシアのエネルギー企業を多く保有していました。しかし、ロシア軍がウクライナ国境に集結しているとの情報が出始めた段階で、マクロ環境を分析するストラテジーチームの助言を受け、侵攻が始まる前に保有比率を大幅に引き下げました。

 ロシア株を減らした分は、UAE、サウジアラビア、ブラジルなど、中東・南米のエネルギー企業に振り向けました。エネルギー分野への投資比率を保ちながら、ロシア固有のリスクを抑制できました。ピクテのグローバルネットワークを通じ、現地情報を精緻に分析できたからこその判断です。

――他に興味深い事例はありますか。

嘉嶋 アルゼンチンのケースでは、大きな地方選挙で与党が敗れ、グローバルメディアが「総選挙でも与党が敗北するのではないか」と悲観的に報じたことがありました。

 しかし、ピクテにはアルゼンチン出身のアナリストや独自の現地ネットワークがあり、「この地方選は特殊なケースで、総選挙では与党が圧勝する」と分析していました。結果はその通りとなり、総選挙後にアルゼンチンの株価と通貨は上昇しました。選挙前に投資していたため、その上昇を収益につなげることができました。

――メディアに依存しない、独自の情報源があるんですね。

嘉嶋 まさにそこが最大の強みです。ピクテは世界95カ国で有価証券の決済や保管などを行うネットワークを持ち、各国の法制度や市場慣行、現地でしか分からないルールを熟知しています。

 日本人が感じる日本と、海外から見た日本に差があるように、投資でも「現地の視点」が欠かせません。ピクテの新興国株チームはロンドンに26人が在籍しており、高配当戦略のコアチームは4人です。担当者は、カザフスタン、ジョージア、ウズベキスタンなどにも自ら足を運ぶほどフットワークが軽いのも特徴です。

――小国も投資対象ですが、分散投資とリスク管理は、どのように行っていますか。

嘉嶋 1銘柄あたりの組み入れについては分散を重視しています。特に、アルゼンチンやパキスタンのような小さい市場においては、組み入れ比率を抑え、慎重に投資を行っています。

――中国市場については、現在どのように見ているのでしょうか。

嘉嶋 配当利回りと業績や財務の両面から見て、魅力的な銘柄は多いと評価しています。特に大手国有銀行は、バリュエーションが割安で配当利回りも高い。不動産市場には慎重ですが、AIやグリーンエネルギー向け融資を通じた成長が期待できるため、保有しています。

米国株偏重を和らげる
「真のグローバル分散」の選択肢に

――新興国株への投資を考える個人投資家にとって、このファンドはどのような位置付けになりますか。

嘉嶋 新興国株への投資を初めて考える方にも適していると考えています。日本の個人投資家の投資先は米国株に偏りがちですが、このファンドは、MSCI新興国株価指数に組み入れられていないフロンティア市場の国々も投資対象としています。より幅広い地域に分散できるのが特徴です。

 また、新興国株ではアクティブ運用が有効だと考えています。情報格差が大きく、企業の質もばらつく市場だからこそ、現地ネットワークと徹底した企業分析による銘柄選びが力を発揮します。インデックスでは拾い切れない優良企業を見つけることが、このファンドの存在意義です。

*新興国よりもさらに経済や金融市場が未成熟で、規模などが小さい国々の市場。


◆新興国株部門 最優秀賞
「ピクテ新興国インカム株式ファンド(1年決算型)」とは

新興国株部門で4年連続受賞。新興国株への投資を考えるなら、まず検討したい1本だ。運用成績はMSCI新興国株価指数を上回りながら、最大下落率はマイナス6.0%と、同部門平均のマイナス16.8%を大きく下回った(2025年12月末時点)。値動きの大きい新興国株において、高い配当利回りが下値のクッションとして機能している。世界の小国にまで広がるネットワークを生かした情報収集力と分析力により、値上がり益も狙える点が魅力だ。

本記事は2026年8月5日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。