半導体メーカーの2007年10~12月期決算は、メモリの価格急落の波にのみ込まれた。
携帯音楽プレーヤーなどに用いられるNAND型フラッシュメモリ(一括消去再書き込み可能なメモリ)を主力とする東芝の同決算は、半導体部門の営業利益が前年同期比で30%減少し、168億円となった。全社の営業利益の約半分を半導体に依存するため、東芝全体でも同25%減と、421億円の営業利益に終わった。
NANDフラッシュの価格は、昨年のピーク時から約40%低下した。2008年1~3月期の価格はさらに20%下がると、東芝は見る。3年間で、提携する米サンディスク分を除いて1兆円強の巨額投資を計画しており、今年度中に予定する国内工場増設の決断を下せば、社運を賭けた大勝負に出ることになる。
パソコンなどに搭載されるDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリ)でも、指標となる大口価格が1年間で85%下がるなど、価格破壊が起こった。DRAM専業のエルピーダメモリは、同期決算で八九億円の営業赤字に陥った。前年同期は273億円の黒字だった。
両分野で世界シェア1位の韓国サムスン電子も例外ではない。需給に合わせNANDフラッシュとDRAMの生産ラインを巧みに切り替える生産調整を行ない対応したが、半導体部門の同期決算は4300億ウオン(約470億円)と前年同期比75%減に落ち込んだ。
しかし、サムスンは今年も前年並みに、両メモリ向けで約7700億円の投資を予定する。特にNANDフラッシュでは、コスト競争力に直結する先端プロセス開発で東芝に先行されており、追い上げに必死だ。
「投資競争は引き下がれない。両製品とも中下位勢は厳しくなる」(南川明・アイサプライ・ジャパン副社長)。
今はまだ各社とも自己資本比率約50%を確保するものの、3四半期連続で営業赤字に苦しむ独キマンダや韓国ハイニックス、米インテル・マイクロンテクノロジー連合なども投資抑制を表明し始めており、余力は小さい。
東芝、エルピーダは、サムスンとの過酷な持久戦を強いられる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 柴田むつみ)