出口の見えない不況のなか、あらゆる業界の企業が「安売り合戦」に身を投じて、疲弊している。ユニクロや外資系企業が低価格合戦を繰り広げているアパレル業界では、価格破壊のトレンドが特に著しい。企業が安売りから抜け出すための「次の一手」とは何か? アパレル企業を中心に、幅広くコンサルティングを行なうプライムピースの西 謙太郎代表が、その秘訣を明かす。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
にし・けんたろう/株式会社プライムピース(03-3402-8620)代表。大手アパレルや海外ブランドでSPA事業開発、マーチャンダイジングなどを手がけ、コンサルタントとして独立。2006年プライムピース設立 。大手セレクト、小売型SPA、スポーツ大手小売など、多くの企業コンサル実績を持つ。 |
――出口の見えない不況のなか、あらゆる業界の企業が「安売り合戦」で疲弊している。ユニクロや外資系企業が低価格合戦を繰り広げているアパレル業界では、価格破壊のトレンドが特に著しい。こんな厳しい状況下でも、好調な企業はあるのか?
わずかだが、最近好調の企業はある。代表的な例が、婦人服を手がけるバロックジャパンリミテッドが展開する「アズール・バイ・マウジー」(AZUL by moussy)だ。
同社は、109系ブランドの婦人服を企画・販売しているが、「アズール・バイ・マウジー」ブランドによる郊外展開やメンズへの参入などにより、顧客層を広げている。
同ブランドが成功している理由は、何と言っても「ブランディング」にある。「お客にこれを訴求したい」というブランドのポリシーが、店舗全体に溢れているのだ。
「アズール」の店舗の特徴は、雰囲気作りのための暗い照明、高い天井、大音量の音楽、店内に広がるフレグランスの香り。加えて、スタッフもスタイリッシュで親切だし、商品価格もお手頃だ。商品はもちろんだが、店舗に入るだけで楽しめる。米国のライフスタイルを、AZULの視点で解釈して表現している。
ブランド全体に一体感があり、独自の世界観を出しているのが、若い女性客を魅了している勝因だろう。
――「何でも安ければよい」という風潮が強まっているなか、ブランディングはお客を刺激する強力な武器になり得るのか?
アパレル業界では、以前から店舗の雰囲気作りが重視されてきたが、最近は特にそれをきちんやっているブランドが売れているように思う。
昔はセールをやればお客が飛びついてきたが、今や「安ければ売れる」という時代ではない。ここまで安売り競争が激化して「万年セール」状態になると、もはや安さだけでは訴求力がない。