事例で読み解く!経営・ビジネスの深層Photo:allensima/gettyimages

第1回から第4回にかけて、資本コストの概念からCAPM理論に基づくリスクとリターンの構造、そして事業ポートフォリオ変革や事業計画の開示といった企業価値を最大化するための「三つの打ち手」について解説してきた。連載『事例で読み解く!経営・ビジネスの深層』「経営者・管理職必修の資本コスト経営改革」の最終回となる今回は、開示に向けた検討段階から開示後の投資家との対話までの間で、企業が直面する「四つのステップにおけるリアルな葛藤と課題」を取り上げ、それを乗り越えるための処方箋を提示して本連載の総括とする。(プルータス・コンサルティング代表取締役社長 野口真人)

社内調整から投資家対話にまで
立ちはだかる「四つの壁」

 理論やあるべき姿を頭では理解できても、いざ東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に応えるべく実務を進めようとすると、多くの企業が社内調整や数値の妥当性に対する疑心暗鬼に直面し、歩みを止めてしまうのが現実である。

「投資家から余計な指摘を増やすだけではないか」という役員会の慎重論、金融機関ごとにバラバラな数値が提出される「パラメータの壁」、好事例集を前に自社がどこから手を付けるべきか悩む「表現の壁」、そして開示後に寄せられる厳しい質問への困惑――。

 筆者連載の締めくくりとなる今回は、実務家が直面するこれら「四つのステップ(社内体制、算出プロセス、開示表現、対話と継続)」の現場での葛藤に光を当てる。それぞれの壁を打破する具体的な処方箋を提示し、資本コスト経営を単なる「対応作業」から「企業変革の好機」へと変えるための思考法を整理していく。