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ここ数年、企業の間で「資本コスト」を意識した経営が浸透し始めている。だが、資本コストとは実際にはどのように計算されるものなのか。連載『事例で読み解く!経営・ビジネスの深層』では、「経営者・管理職必修の資本コスト経営改革」と題して全5回にわたって資本コスト経営の本質を解き明かしていく。第2回となる本稿では、CAPMというファイナンス理論のモデルに基づく資本コストの計算方法と「株主が期待するリターン(儲け)」の本質について解説していこう。(プルータス・コンサルティング代表取締役社長 野口真人)
見えない「投資家の期待」を
どうやって数字にするのか?
前回(『東証が経営者に突き付けた“警告”の真意、「資本コスト」を巡る投資家と経営者の決定的なギャップの正体とは』)では、資本コストという言葉の誤解について触れた。
資本コストとは、銀行に払う利息のような目に見える「費用(コスト)」ではなく、投資家が「この会社に大切なお金を預けるのだから、最低限これくらいは儲けさせてほしい」と要求する「期待リターン(期待収益率)」のことである。
企業価値とは、会社が将来稼ぎ出す現金を、この「投資家の期待」というハードルで割り引いて計算したものである。従って、投資家からの信頼を得てこのハードル(資本コスト)を下げることができれば、利益を増やすことと同じか、それ以上に会社の価値を引き上げることができる。これが資本コスト経営の土台となる考え方である。
しかし、いざ実務の現場で自社の資本コストを計算しようとすると、ここで大きな壁にぶつかる。「投資家が心の中で期待している儲けの水準」という目に見えない主観的なものを、一体どうやって具体的なパーセンテージ(数値)にすればよいのだろうか。銀行の借入金利のように「今月の金利は○%です」と請求書が送られてくるわけでもなければ、会社の決算書を隅々までいくら眺めても、どこかに正解が書かれているわけでもない。
だが、投資家の見方は全く異なる。経営者からすれば「正解がない、目に見えない」資本コストでも、投資家にとっては、決して曖昧なものではない。
そこで、「経営者・管理職必修の資本コスト経営改革」連載の第2回となる今回は、「目に見えない投資家の期待値」を推し測るための世界的な物差しである「CAPM(キャップエム:資本資産価格モデル)」というファイナンス理論について解説する。
「理論」や「モデル」と聞くと、難解な数式が並んでいるようで身構えてしまう経営者や実務担当者も多いかもしれない。しかし、その根底にあるルールは「リスクが高いものほど、高い見返り(リターン)を求める」という、私たちが日常的に感じている極めてシンプルな原則である。この理論をひも解くことで、自社のビジネスの不確実性(リスク)を市場がどのように評価しているのか、その実態を映し出す鏡が見えてくるはずである。
なお、本連載で当面「資本コスト」と呼ぶものは、投資家の期待リターン(期待収益率)、すなわちファイナンス理論における「株主資本コスト」と同義であるとする。企業が調達する資金には銀行借り入れなどの負債も含まれるが、負債も含めた企業全体のハードルである「WACC(加重平均資本コスト)」については、第4回で詳述する。







