前回は、「長生きリスク」に対処するためには、“定年退職後は投資しない”という固定観念から脱却し、まだまだ続く長い老後を活かし、退職後もできるだけ長く投資を続ける必要があるとお話ししました。そう考えると、たとえ55歳からでもラストスパートと言うには長すぎる数十年もの投資期間があると考えられるので、「長期投資」による複利効果や時間分散効果を十分享受できるのではないでしょうか。今回は、人間固有のバイアスを回避する最後の仕組みである「積立投資」についてお話しします。

 55歳という年齢は、老後資金の準備におけるターニングポイントと考えられます。20代後半に結婚して末の子供が30~35歳のときに生まれた場合、55歳頃はその子供が大学を卒業する時期に当たります。

 つまり、一般的には教育資金の負担から解放されて家計が楽になり、それまで難しかった自分たちの老後資金づくりに力を入れることができるようになる時期です。その際、資産形成のゴールを定年に設定してラストスパートとばかり預貯金で一気に貯めようとするよりも、退職後も含めた長い期間を想定して腰を据えて投資したほうが成功の確率は高まると考えられます。

 そんな人にお勧めの投資方法が積立投資です。ある程度まとまった資金になるまで預貯金で貯めておいて一度に投資をするのではなく、毎月少しずつ株式や投資信託などを購入するやり方です。「それって、そんなに大きな違いがあるの?」と思うかもしれませんが、実は大きな違いがあるのです。では、積立投資がどのようなものか見ていきましょう。

積立投資は買い物と同じで、安いときに多く買う

 まず、積立投資の大きなメリットは、投資タイミングが分散されることです。資金を一度にまとめて投資する場合、結果はそのときの市場動向に大きく左右されます。例えば、まとまった資金ができたタイミングがたまたま2012年11月に野田前首相が衆議院を解散したときで、日本株の大幅上昇が始まる直前に投資したのであれば、大きな利益を得られたでしょう。でも、資金ができて投資をしたのが今年5月だったら、株価がその後大きく調整したため、損失を被っているでしょう(2013年6月末現在)。