私たちが投資において合理的な行動をなかなか取れない原因は人間固有のバイアスにあるため、それを回避する策として、前回は自分の意思を極力排除してあえて資産形成を「仕組み化」することを提案しました。具体的な方法としては分散投資、長期投資、積立投資などがありますが、まず分散投資に関して、なるべく多くのものに投資をすることによって投資効率が高まるという効果について説明しました。今回は二つ目の長期投資を取り上げます。
お金がお金を産む効果:複利効果
長期投資には二つの効果があります。一つはお金がお金を産む「複利効果」で、もう一つは長期で見るとプラスとマイナスがならされる「時間分散効果」です。
まず、複利効果についてお話しします。100万円を投資する場合、毎年3%のリターンが得られると想定すると、運用で得られたリターンをその都度確保して再投資しないケースでは元本は一定で、資産は毎年100万円の3%、つまり3万円ずつ増えます。元本とリターンの合計は1年目が103万円、2年目が106万円、3年目が109万円となり、こうして計算されるリターンを「単利リターン」と呼びます。
一方、運用で得られたリターンを再投資する場合は、リターンの分だけ元本が毎年増えていきます。1年目は100万円の3%なので元本は3万円増えて103万円になり、2年目は103万円に対して3%のリターンが得られるので元本は3万900円増えて106万900円になります。単利の場合、2年目は106万円ちょうどでしたので、こちらのほうが900円多くなります。このようにリターンを再投資した場合のリターンのことを「複利リターン」と呼び、複利リターンと単利リターンの差が「複利効果」となります。
2年間で900円という差は子供の小遣い程度ですが、実は複利効果が本領を発揮するのは長期投資においてなのです。複利効果は時間の経過とともに加速度的に大きくなり、元利合計は雪だるま式に膨らんでいきます。先ほどと同様、元本100万円で毎年3%のリターンを得られるケースで25歳から65歳まで40年間投資を続けた場合、元利合計は単利運用の220万円に対し、複利運用では326万円と、その差は2年間の900円とは比べ物にならない106万円にもなります。これが「時間を味方につける」長期投資の大きなメリットの一つである複利効果なのです。