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スマートフォンの理想と現実

マイクロソフトとノキアの“遅すぎた春”
その夢いっぱいの未来と、足もとに山積みの課題

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第49回】 2013年9月4日
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 マイクロソフトといえば、WindowsやOfficeといった、PC向けのソフトウェアの会社、という認知が強いはずだ。しかし彼らはハードウェアに関しても、一定以上の知見を有している。キーボードやマウスといった入力デバイスは彼らが伝統的に大切にしてきたものだし、またXboxは、ゲームコンソール分野では世界市場ですでにメジャーな存在であるだけでなく、スマートテレビのセットトップボックスとしての地位も確立しつつある。

 そしてマイクロソフトは、他社に先駆けてスマートフォンOSを提供してきた事業者でもある。日本でもウィルコムがWindowsMobile搭載のスマートフォンを提供していたことをご記憶の向きもいるだろう。iPhoneが世を席巻するまでは、むしろスマートフォンといえばマイクロソフトという時代が、存在したのである。

 しかし、iPhone以降の同分野に関して、マイクロソフトは失敗続きだった。OSの開発も思うように進まず、端末自体も鳴かず飛ばず。2010年4月には、シャープ製のKINという新たなスマートフォンを発表したものの、わずか50日足らずでプロジェクトそのものを終了するという体たらくでもあった。

 スマートフォンや関連する分野で、マイクロソフトは他社に大きく水をあけられていた。そしてそれは、スマートフォンの先につながるクラウド環境を前提としたサービスのシェア獲得競争にも、大きな影響を及ぼしていた。

MWC2013でのノキアブース。先進国では影が薄くなったノキアブランドだが新興国市場でのプレゼンスは健在だ  Photo by Tatsuya Kurosaka

 特に昨年後半から今年にかけて、スマートフォンのみならずタブレットの台頭が、先進国では大きく広がった。これは既存のパソコン市場と完全に競合する分野であり、ここでの成否は彼らの本来事業の業績、というよりマイクロソフトそのものの存在意義に、直接関わる問題でもあった。そう考えれば、彼らが舵を切ったのは、自然な選択といえる。

 新興国のデバイス普及戦略にも、好ましい影響はあるだろう。先進国のスマートフォン市場では、ノキアの印象は薄らいでしまったが、新興国では相変わらずノキアのブランドは一定以上の認知を得ている。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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