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「人間を経済的動物(エコノミック・アニマル)とする概念は、経済活動をあらゆる目的を実現するための手段としてみるブルジョア資本主義社会、及びマルクス社会主義社会の基盤である。経済的な満足だけが社会的に重要であり、意味があるとする」(『「経済人」の終わり』)
経済人(エコノミック・マン)の概念は、アダム・スミスとその学派により、ホモ・エコノミカスとして示された。これは、「経済人とは、常に経済的な利益に従って行動するだけでなく、常にそのための方法を知っている」という、概念上のモデルであった。
この経済至上主義が、失敗を招くことになった。
民主主義を自力で勝ち取っていた国が遅疑逡巡しているあいだに、民主主義を国家統一の過程で手にしていた国では、経済至上主義の失敗に耐え切れずに国家社会主義へ走ったと、ドラッカーは分析している。
今日では、生産性革命とマネジメント革命のもたらした豊かさが、先進国からかつての悲惨さをなくしてくれた。しかしドラッカーは、経済のために生きることで満足できるか、経済至上主義で人は幸せでありうるのかを、問い続ける。
「経済至上主義は、経済的な地位、経済的な報酬、経済的な権利が、人の働く目的であるとする。これらのもののために、人は戦争をし、死んでもよいと思う。そして、ほかのことはすべて偽善であり、衒いであり、虚構のナンセンスであるとする」(『「経済人」の終わり』)