東京の都営バスはこのほど、都心の一部で終夜運行を行うと発表した。渋谷駅~六本木駅を結ぶ約3kmの区間を、1時間に1本程度の間隔で終夜運行する。今年12月からのサービス開始となる。
「終夜運行」といえば、大晦日、初詣客を運ぶ電車やバスの特別運行などを思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし通年で都バスが一晩中運行するとなれば、都市生活者の意識や行動も変わりそうだ。
この構想の発端は、今年4月の猪瀬直樹・東京都知事の米ニューヨーク訪問。NY市地下鉄の24時間運行に触発され、「東京でも終夜運行を」と打ち出した話が実現した格好だ。
都バス以外に目を転じてみても、東京都地下鉄(都営地下鉄)はまだ慎重な姿勢だが、東京メトロは前向きに検討しているという。大阪市交通局も今年3月、ほとんどの地下鉄路線で終電を最大30分遅くするなど、各社で軒並み「深夜帯」に注目する動きが顕著だ。
都バスの「終夜運行」で
東京の夜はどう変わるか?
また、終夜運行がスタートすれば、大きな経済効果が期待できるという。東京都内のバスと地下鉄が全路線で終日動くという前提で行った試算がある。それによれば、交通機関の終夜運行によって、都内の外食の年間売上高増加分は約1100億円で2割増、スーパーなど小売の年間売上高の増加分は約150億円で5割増になるという(いずれも午後10時~翌午前4時30分までの深夜帯で試算、2010年比、野村総研調べ)。
猪瀬知事の肝入りであった2020年東京五輪も招致が成功し、いよいよ現実のものとなる。様々な形で喧伝されているように、東京都は開催までの7年間で約3兆円の経済効果があると算盤を弾いており、意気盛んだ。
さらに全国規模で見ると、観光産業やインフラ整備の伸長などを含めて、実に約150兆円に達するとの見方もある(大和証券調べ)。この五輪特需で景気が一段と活気づけば、人々の消費マインドも上向きになり、終夜運行との相乗効果も期待できそうだ。
東京は現在「世界の都市力ランキング」(2012年版・森記念財団都市戦略研究所調べ)において、総合点で第4位、交通・アクセスは第8位にランクインしているが、終夜運行で、都市力アップも期待できる。東京の競争力が高まることで、海外企業の誘致や雇用増などにもつながるだろう。
(田島 薫/5時から作家塾(R))