法人税減税(以下、法人実効税率の引き下げを意味する)はなぜもめるのか。財政目標を軽視する安倍政権と旧来型の税制志向の自民党税調、財源偏重の財務省という3者の利害の相違が原因である。法人税を巡るプラスサムの解決策は、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」ことしかない。それができるかどうか、安倍政権の真価が問われる。
安倍政権の財政再建への
コミットメントは貧弱
安倍政権の財政に対する認識の軽さは、特筆ものである。消費税率を3%引上げながら、そのうちの2%分である5兆円を経済対策として還元するという。このことが、わが国の財政目標である2015年プライマリー(基礎的財政収支)赤字半減とどう整合的なのか、その点は厳しく問われなければならない。
経済対策の中身を見ると、案の定というか、論理の通らないものが数多く入っている。例えば、年金受給者には低所得者対策としての1万円に加えて5000円の上乗せするが、「高齢者にも負担を求めるのが消費税」と言ってきたことと矛盾する。国土強靭化やオリンピックに名を借りた公共事業の追加はなおさらだ。
消費税率引き上げの議論は社会保障・税一体改革としてスタートしたわけで、その原点を忘れてはならない。
デフレ脱却を目指すその姿勢に異論はないが、財政再建へのコミットメントの弱みを見せれば、国際投機筋の餌食となる。また、日銀異次元緩和の出口戦略が、財政再建へのコミットメントであることを認識しておかなければ、結局「日銀は財政ファイナンスを行っただけ」という結果になりかねない。この認識が市場に広まれば大規模な日本売りとなる。
安倍政権の考える
法人税減税の狙い
安倍政権は、今回の経済対策に当たって、最後まで法人税減税・実効税率引き下げに固執した。その理由は、法人税減税により企業所得を増やして、賃金や雇用増につなげたいという考え方がある。