勝ち組同士が国境をまたいで経営統合する──。日本企業の絡む再編の珍しい形態に注目が集まっている。
半導体製造装置大手で世界3位の東京エレクトロンと世界首位の米アプライドマテリアルズが手を握ることで、世界シェア約25%、時価総額約290億ドル(約2.8兆円)の巨大企業が誕生するのだ。
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珍しいのはその運営形態だ。まず、両社がオランダに持ち株会社を新設して法人登記し、本社機能は東京とカリフォルニア州サンタクララの両方に置く。オランダに会社を置くのは、「税率が(米国の)22%から17%になる」(ボブ・ハリディ・アプライドCFO)という税制メリットを享受したもので、経営の指令は日米双方から送られることになる。
だが、古今東西の再編を見渡しても、精神面で“対等”といったところで、実際はどちらかが主導権を握らなければ効果は十分に表れない。今回の経営統合もトップ人事やそもそもの事業規模などから力関係が見えてくる。
鍵となるのは、新会社のCEO、CFOを共にアプライド側が握ったことだ。つまり財布を握り、経営決断する人物がアプライド側となることで、彼らの主張が強まっていく可能性は否定できない。
ソーラーは切り離し?
例えば、両社の数少ない重複事業である太陽光パネル製造装置(ソーラー)事業。東京エレクトロンは2012年11月にスイスのエリコン・ソーラーを買収したばかりだが、13年第1四半期決算で20億円の売上高に対し、営業利益は25億円の赤字。アプライドも赤字事業となっている。
現地アナリスト向けの説明会で、ハリディCFOは新会社でのソーラー事業の切り離しを否定せず、「新会社は半導体、薄型パネルビジネスに集中していく」と応じた。