任天堂のひとり勝ちが続くゲーム業界。ソニーやマイクロソフトなどIT業界を代表する大企業が隙を伺う一方で、最近はアップル社の携帯電話機「iPhone」が携帯ゲーム機としての存在感を増大させるなど、業界勢力図に微妙な変化が出始めている。相変わらず、先行き不透明な業界のなかで、ソフトメーカーはどう生き残りを図るのか。4月1日に国内有力ソフトメーカーの2社、コーエーとテクモが経営統合して発足した、コーエーテクモホールディングス初代社長の松原健二氏に今後の戦略と意気込みを聞いた。(聞き手/石島照代)

松原健二
松原健二(まつばら けんじ)
1962年生まれ。東京都出身。東京大学大学院工学系研究科、MITスローンスクール(経営大学院)を修了。日立製作所、日本オラクルを経て、2001年12月にコーエーに入社。執行役員を経て、2007年6月社長。2009年4月、コーエーとテクモが経営統合し、コーエーテクモホールディングスが発足、初代社長に就任。Photo by 岡村夏林

―無事、経営統合ができたことに関する率直な感想は?

 正直、ほっとできていない。まだ、いろいろやることが多すぎて大変だという気持ちだ。ただ、これからはステップの踏み方が変わるので、私を含め全社員が、より未来志向で考えられるようになるだろう。

 今までは新しい会社の形を作っていくことに関して大変な労力を割いてきた。今は何とか形にはなったが、それでもチェックしなければいけないことも多いし、やはり大変だという気持ちの方がまだまだ大きい。

―ゲーム業界は不景気の影響を受けないといわれている。

 確かに、景気の影響は他業種と比べると小さい。最近指摘されている「巣ごもり効果」の好影響もあり、我々パブリッシャーとユーザーさんは不景気にあまり影響されていないように感じる。海外旅行の代わりにゲームを買って遊んでいるという話を聞くと、テレビゲームは健全な娯楽になっていると実感できてうれしく思う。

 ただ、流通の財務体質が若干弱っている感じが、気にかかっている。ゲーム業界の流通の仕組みは他業界と同じなので、資金調達の難しさは不景気の影響を受けている他業界の流通と変わらない。ゲーム業界が不景気の影響を受けているとすれば、この部分だろう。

 いま、業界はやっと高性能家庭用ゲーム機「プレイステーション3」(ソニー)と「Xbox360」(マイクロソフト)のゲームの作り方が分かってきたところ。私自身は勝負はこれからだと思う。

コーエーテクモが
抱える二つの課題

―その割には、コーエー、テクモ両社とも昨年は同業他社と比較して株価が下がりすぎたという指摘もある。

 株価はあくまで投資家の皆様が判断するので、結果は真摯に受け止めなければならない。特に統合発表後に株価が下がったことに関しては、新会社に対する皆様の期待が高いことの表れだと思っているので、業績で判断していただけるよう、力を尽くしたい。投資家の皆様に、よいご判断をいただけるような数字を出すのが、我々経営陣の仕事だと思っている。