北京五輪の開催を直前に控え、現在、中国は世界で最も注目を集める国となっている。しかし、高い経済成長率や五輪開催という輝かしい“光”の部分とは裏腹に、中国は、環境汚染や経済格差など、様々な“影”を抱えている。最近では、国民の抗議行動や暴動などの件数が増加しているという。

 米国の次に来ると目される“覇権国候補ナンバーワン”の中国には、間違いなく“光と影”がある。中国経済は高成長を続けているものの、世界的に景気にブレーキがかかるなか、中国の輸出にもやや影が出始めている。
今年上半期の経済成長率は10.1%に低下した。

 それを反映して株価の低迷が続いており、株式市場に一時期の勢いはない。損失を抱えた個人投資家も多いようだ。また、原油や一部穀物価格の上昇もあり、足元のインフレ率は7%台後半に上昇している。

 政府は、金融政策を動員して物価上昇の抑制に取りかかっているが、今のところ目立った効果は出ていない。インフレが高進すると、国民の不満が増幅されることも考えられる。当分、中国の“光と影”から目を離せない。

輸出依存の“世界の工場”
高い固定資産投資の割合もネックに

 中国はケタ違いの国だ。13億人の人口を擁し、年率10%を超える経済成長を続けている。1980年代、日本が維持していた“世界の工場”の地位は、すでに中国に奪われてしまった。それだけ大きな国が、それだけの高い成長を達成しているのだから、必要とするエネルギー資源や穀物は半端ではない。天然ゴムの世界生産量の半分程度が中国で使われているという。

 また、人口が多いぶん、食料品の消費もスケールが違う。中国の消費拡大は、世界的に小麦や大豆などの価格を高騰させる一因にもなった。
 
 その中国の経済構造について、2つのポイントを頭に入れておくとわかり易い。1つは輸出依存度が高いことだ。やや意外かもしれないが、GDPの3割以上を輸出に依存している。貿易立国といわれるわが国の輸出依存度が10%台後半であることを考えると、いかに中国経済が輸出に頼っているか明らかだ。そのため、中国経済は予想以上に「外部要因=世界経済の動き」に影響を受けやすいのである。

 もう1つは、固定資産投資の割合が高いことだ。中国のように社会資本蓄積が相対的に低い新興国では、社会インフラなどを作らなければならない。その意味では、この傾向は当然といえる。ただ、固定資産投資には、橋や道路、港湾施設などの建設に加えて、企業などの投機的な不動産投資なども含まれる。「不動産に投資して一儲けしてやれ」という経済活動が盛んなのだ。固定資産投資の比重が高いことは、中国人の一種の“ギャンブル好き”の国民性を表しているといえる。