どうすれば、プロに使ってもらえるブランドになるのか?
「ネスカフェ」は、年間に120億杯も飲んでいただいている。ただし、そのほとんどは家の中だ。一歩家の外に出ると、コーヒーを飲む場所や機会はいくつもある。そのため、ネスレにとっては、まだまだ開拓の余地があることがわかる。
では、「ネスカフェ」を外でも飲んでもらえて、かつカッコいいブランドにするためには何をすべきなのか。その1つとして、外食のプロフェッショナルに認めてもらい、実際に使ってもらうことが挙げられる。
そこでまず、私が副社長になった年に、家庭でカフェにいるようなメニューを手軽に楽しみたいというニーズに対して「ウチナカカフェ」というコンセプトを打ち出した。そして、それを体験してもらうために、原宿に「カフェ ネスカフェ」という店舗をつくっている。
「カフェ ネスカフェ 原宿」は、原宿駅の竹下通りの反対側にある。人通りはほとんどなく、最高の立地とは言えなかった。また、立地のハンディだけではない。「ネスカフェ」は、私自身もそれほど好きだと言えなかったブランドでもある。
「ネスカフェ」の看板をつけて、「ネスカフェ」を提供して本当にお客さまがやってくるのか。プロに使ってもらえるブランドに生まれ変われるという構想はあったものの、ふたを開けてみるまでは結果はわからなかった。しかし、実際には、オープンから3ヵ月後には利益が出るまでになった。
店舗では、業務用の「ネスカフェ」のマシンを使い、カフェチェーンで楽しめるようなカフェメニューを提供している。コーヒーの液面に「クレマ」と呼ばれる細かな泡のたったコーヒーを飲んだお客さまは、「ネスカフェ」を使っているとは思っていないのではないだろうか。
さらに「カフェ ネスカフェ 原宿」を舞台にした「原宿ネストカフェ」というテレビ番組を始めたところ、今度は行列ができるまでになり、一躍「カフェネスカフェ」の認知度は上がった。
この結果は、私自身が「ネスカフェ」のブランドを過小評価していたと言える。前回も述べたように、マーケティングはやってみるまでわからない。だからこそ、まずはやってみることが重要だとも言える。