ネスレ日本100年の歴史において、史上初の生え抜き日本人CEOに就任した高岡浩三氏。「キットカット」受験生応援キャンペーンや「ネスカフェアンバサダー」など、数々の革新的な取り組みを実行してきた。『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)の刊行を記念して、著書では語り尽くせなかったマーケティングの真髄が明かされる。

「インスタントコーヒー」を進化させた技術革新

「カフェ ネスカフェ」という家庭外での展開は、プロにも認められる「ネスカフェ」の技術革新によるところが大きい。それは「挽き豆包み製法」という新技術である。そして、この技術を採用したコーヒーを「レギュラーソリュブルコーヒー」と呼んでいる。

 レギュラーコーヒーの場合、焙煎豆を挽いてつくるとたしかにおいしく飲める。しかし、焙煎豆、とくに挽いた豆は時間の経過とともに酸化してしまうため、プロでもおいしさを保つことが難しい。ネスレ日本が展開しているレギュラーコーヒー事業で、挽き立てのコーヒー豆を一杯ずつ専用カプセルに密封しているのは、空気に触れることによる酸化を防ぐためである。

 これに対して、「レギュラーソリュブルコーヒー」には、微粉砕した焙煎コーヒー豆をネスレ独自のコーヒー抽出液と混ぜ合わせて乾燥し、インスタントコーヒーのパウダーの中に封じ込めるという画期的な技術が採り入れられている。これが「挽き豆包み製法」だ。

 この技術によって豆の酸化の原因となる空気との接触を低減し、手軽さはそのままに、一杯ずつ淹れたての香りと味わいを生み出すことが可能となった。飲み終わった後には、カップの底には微粉砕されたコーヒー豆が残る。このコーヒー豆の粒がおいしさの証でもある。

 従来の「インスタントコーヒー」からの技術革新によって、プロに認められて、外でも飲まれるコーヒーへと進化を遂げた。