ブランドへの愛情と批判的目線を両立する

 ブランドに対する愛情と批判的で冷静な視点、その両方を持っていることは、マーケターにとって必要だ。

 社長としての本音を言えば、ネスレの商品・ブランドが本当に好きな人間をもっと採用したいという気持ちはある。一方で、「ネスレの商品を嫌いな人間のほうがいいかもしれない」とも思っている。私自身、「ネスカフェ」があまり好きではなかったからこそ、自分すら好きになるブランドに育てたいというモチベーションになったからだ。

 マーケターにとって、自分が関わったブランドは自分の子どものようなものである。愛着もあり、責任も持っている。しかし、顧客目線で見たときに、必要以上に好きになってしまうと、見誤ってしまうこともある。

 だからこそ、常に批判的な目線を持つことも必要だ。「私は『ネスカフェ』を飲まない」「俺は『キットカット』は絶対に買わない」という人の目線に立つ冷静さは欠かせない。

次回更新は、11月20日(水)を予定。


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「社会の大きな変化に目を向けよ 消費者はデータから見えない」を寄稿!

「顧客を読むマーケティング」『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(2013年10月号)

 成熟市場における消費者の嗜好は、かつてないほど多様化している。消費者のニーズは一人ひとりすべて異なると考えられ、いち早く察知することに企業は躍起になっている。くわえて、ビッグデータなど情報収集ツールの進化によって、個人の消費活動が詳細かつ正確に捕捉できるようになったことも、その傾向に拍車をかけている。
 しかし、本当にそれで消費者の心を射止めることができるのか。消費者は自分自身の本心を把握しているとは限らない。気づいていないことは、いくら聞かれても答えられないのである。マーケティング・リサーチの結果をうのみにすることは危険である。本稿では、むしろ人間の本質を見極めたうえで、社会の環境変化からニーズの変化を探り当てることが大切であり、それこそが本来のマーケティングであると説く。

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