世界市場に出ていく日本企業は増えたが、最初から海外だけで仕事をしている日本企業は少ない。一度は会社清算に追い込まれた三井海洋開発は、小さく再出発した後は「不安定」を「安定」に変える試行錯誤で成長を続ける。その秘密に迫った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 現在、海洋資源開発の世界で、最も“熱い”地域は、南米のブラジルである。2007年に沖合で発見された「プレソルト」(海底約5000メートルにある岩塩層)の下に眠る油・ガス田の開発が急ピッチで進む。

 11月5日、三井造船グループの三井海洋開発は、ブラジルの国営石油会社ペトロブラスと、プレソルト向けでは5基目となる「FPSO」(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)の建造および20年間のリース(チャーター)契約の発注内示書を受領した。受注金額は明かされていないが、1000億円を超えるとみられている。

 FPSOとは、“海上に浮かぶ巨大プラント”で、波風に流されないように係留し、原油や天然ガスを海底から吸い上げて船上で各種の加工をする専用設備を指す。

FPSOは、元は原油を運んでいた中古の大型タンカーを改造する。先端部にある円形の構造物が「係留装置」になる(左)。船の甲板上に原油・天然ガスの処理を 行う各種プラントが据え付けられる(右下)。2013年中にもこの船はブラジル沖で生産を開始する予定(右上)
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