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スマートフォンの理想と現実

消費者は通信サービスに何を期待しているか
通信事業者に求められる「市場の再定義」

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第56回】 2013年12月11日
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 最終消費者は、通信サービスに、一体何を期待しているのか――そんな逡巡の繰り返しの果てに、究極の難題が、目の前に立ちはだかる。

 これが難題であることは、通信産業を手伝う人間としても、よくわかっているつもりだ。なにしろ通信サービスという概念自体が、過去20年の間で劇的な変化を遂げた。その変化の当事者が、自らのアイデンティティを理解できなくなるのは、自然とさえいえる。

 1993年を思い起こしてみれば、まだ多くの人はインターネットも携帯電話も利用していなかった。おそらく「通信」という言葉さえも日常語ではなく、ほとんどの人はその下位概念(具体的な対象)である「電話」という言葉を使っていたはずだ。そんな時代から、まだ20年しか経っていないのだ。

 幸いなことに通信事業は成長産業として大きな利益を得ることができた。だからこそ今日の立派な姿があるのだし、それゆえに悩むこともできる、いわば贅沢な悩みなのかもしれない。しかしそうした成功体験が、その後の成長の足かせとなるのは、古今東西、枚挙に暇なし。

 まして通信サービスは、全国規模かつ老若男女が対象となる事業である。これをつぶさに理解することは、日本に暮らす人たちのすべてを理解することと同義ともいえる。いくら通信事業者とはいえ、民間企業に過ぎない彼らが、政府にさえ困難なことを、果たしてできるのだろうか。

通信事業者がいまなすべきこと

 しかし私は、いまこそ市場を理解するための動きを、強めるべきだと思っている。

 通信事業は営利事業であり、事業者は民間企業である。ならば、市場を理解する努力を重ねることは、当然の責務でもある。そうでなければ、どんな仕事も成立しないはずだし、それをしないのは怠慢であるとも言える。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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