経産省は12月6日に、中長期のエネルギー政策の方向を示す「エネルギー基本計画」の原案を発表。一部修正を経て年内に最終案を固め、年明けに新しいエネルギー基本計画を閣議決定するという。

 原発を「重要なベース電源」と規定した原案はその後「基盤となる重要なベース電源」と修正。事故以前の「基幹電源」の表現より原発重視が一段と強まった印象を受ける。また原案は「必要とされる規模を確保」として新増設を容認、原発依存を拡大する方向を示している。

 要するに、原発政策は原発事故以前の姿に戻ってしまったのだ。

 これに追い打ちをかけるように、17日、放射性廃棄物の最終処分に関する関係閣僚会議が新設され、首相官邸で初会合を開いた。

 この席で安倍晋三首相は「将来世代に先送りせず、関係閣僚が一丸となって(最終処分場の設置を)推進してほしい」と強調した。

 これは誰が見ても小泉純一郎元首相に向けたポーズに映る。それこそ、単に努力を偽装するもので、見えすいた先送り手法である。もちろんこんなことであの小泉氏が納得するはずがない。むしろ火に油を注ぐようなものになるだろう。

「トイレのないマンション」を流行語にして、最終処分場問題に関心を集中し、「原発即ゼロ」を唱えて譲らない小泉元首相には、四方八方から矢が浴びせられている。

 その中でも最も強い批判は、彼が「代案を示さない」ことであり、将来の経済や国民生活に「無責任で楽観的過ぎる」ということのようだ。

 これに対して彼は「必ず知恵のある人がいい案を作ってくれる」と言って押し返している。それに小泉氏はかなり具体策(『小泉純一郎の「原発ゼロ」』山田孝男著)も示して反論していることに驚く。

小泉純一郎と石橋湛山の共通点

 孤軍奮闘する小泉氏を見て、私は戦時中の石橋湛山元首相を思い出す。

 石橋湛山は、戦後昭和31年に首相に就任したが、病気のためわずか2ヵ月後に退陣した。

 戦前、彼は言論人として大正期から雑誌東洋経済を舞台に軍部に抗してまで堂々と論陣を張った。