東京電力の命運を握る柏崎刈羽原子力発電所の再稼働。それに待ったをかける立地県首長の真意に迫る。

――東電は現在、銀行から新しい融資を受けるための総合特別事業計画を書いていますが、東電の収支は完全に柏崎刈羽原発に依拠しています。結局、金の問題で再稼働せざるをえないという状況について、どのように考えていますか。

いずみだ・ひろひこ/1987年、通商産業省(現経済産業省)に入省。資源エネルギー庁石炭部計画課、石油部精製課総括班長などを歴任。2004年、新潟県知事に就任し、現在3期目、任期10年目を迎えた
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 言いたいことは2つ。1つは、原子力発電部門を東電から分離しないとダメではないかということ。3月11日以前は東電も、県からの安全対策要請をかなり 前向きに考えてくれていました。それが今、苦しい懐事情のために先送りや曖昧な対応になっている。県民の生命や安全、財産を守る知事の立場として、原発を 安全に運用すべき東電がこれでは困ります。

 それというのも、そういう制度設計になっていることが問題なんです。国策民営でやってきた事業で大事故が起きたときに、すべて東電の利益で賠償させるス キームになっているから、「柏崎刈羽の再稼働か新潟県民の安全か」なんて選択肢になるんです。根本的に変えるべきです。そのために、いろいろ活動していま す。

――具体的にどのような取り組みをしているのですか。

 いろいろやっているんですけど、手の内は明かせませんので(笑)。こんなことをやっていますって言ったら、フタをされちゃうじゃないですか。

 誰が責任をとるか、被災者の救済をどうするのかも含めて制度設計を見直すということになれば、また違った結論が出るわけです。なんら責任をとっていない株主や東電に融資している金融機関に責任をとってもらう破綻処理も一つの選択肢です。

 言いたいことのもう一つは、再稼働の議論の前にやるべきは福島の事故の検証と総括で、これが唯一無二ということです。その中で東電は、なぜ事故発生から2カ月もの間、メルトダウンの事実を認めず故意の虚偽発表をしたのか原因を解明すべきです。