まず、充填時にあまりに人手がかかるのに耐えられなくなりました。さらには、普通酒そのものが価格競争のなかでまったく売れなくなりました。
 紙製品を扱っていた取引先に、商品の打ち切りをお詫びに行くと、「うちがせっかく売ってやっているのに、やめるとはなんだ!」と怒られました。しかし、「企業の身を削って」ときれいごとを言ったところで、つまるところ、費用をお客様にご負担いただけなければ倒産します。

 しかも、あれだけ「酒が売れないから仕事がない」と嘆いていた古参の瓶詰め部門の社員たちが、実際に忙しくなると、みな辞めてしまいました。

 結局、減り続けている地方の普通酒市場を相手に商売を続けている限り、小手先の工夫をしたところで、焼け石に水。なんの解決にもならない。そう思い知らされた出来事でした。

 抜本的な過一句の必要性を痛感し、この後、純米大吟醸造りに邁進することになります。


<新刊書籍のご案内>

従来策のテコ入れは<br />既存路線の延長にすぎない

『 逆境経営 』

カネなし!技術なし!市場なし!
山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法

つぶれかけた酒蔵を立て直し、世界約20ヵ国に展開するに至った、熱いスピリットと“七転び八起き”な合理的思考法をまとめた1冊です。カネも技術も市場も持たない山奥の小さな酒蔵が自己変革してきた間の「ピンチをチャンスに」変える発想は、酒造り以外にも活きるエッセンスが満載です!

ご購入はこちらから!
Amazon】 【紀伊國屋BookWeb】 【楽天Books