SNSの世界最大手、フェイスブックの株価が急激に上昇している。背景には2012年5月の上場直後から不安視されてきたモバイル向け広告販売の急激な成長がある。
12月19日、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の世界最大手の米フェイスブックが同社初となる動画広告を試験的に掲載した。
一部ユーザーに対して、公開予定のSF映画「Divergent」の予告編が流れるというもの。普段は家族や友人らが投稿した写真、コメントをスクロールしながら読む「ニュースフィード」と呼ばれる中核スペースに、無音のまま再生された動画が流れてくる。指でタップすると、音声が流れて画面全体に表示される仕組みだ。
視聴して面白いと思えば定番の「いいね!」ボタンを押したり、シェアやコメントもできる。
同社によれば、まずは個人の投稿やミュージシャンによる動画を楽しむサービスとして始めるが、その先には冒頭のような広告枠として利用する計画も認めている。
驚きをもって受け止められているのが、その広告料の高さだ。
「全米1億4000万人のユーザー(18~54歳)に対する動画広告は1日200万ドルだ」
米「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、現地広告代理店の声として広告費を紹介。その狙いを、年間6兆5000億円ほどといわれる米国のテレビコマーシャル予算の“奪取”にあると説明している。
この動画広告戦略の成否はまだ定かではないが、フェイスブックの収益力について、株式市場の評価は急速に高まっている。
2012年5月、満を持して米ナスダックへ上場したフェイスブック。初取引の日こそ公募価格38ドルを上回ったものの、株価はすぐに下がり続けて「世紀の大失敗」と呼ばれてきた(図(1))。
上場時に明らかになったシステム不備や情報開示の不透明性は、訴訟問題にまで発展。さらに社員のインセンティブのために与えてきた自社株式の価値分を過去にさかのぼって一気に費用計上したため、一時的に赤字決算に陥った。