米国の新大統領に民主党のバラク・オバマ上院議員が選出された。日本では、オバマ新大統領で日米関係がどう変化するかに焦点が向けられているようだ。オバマ氏が中国重視だとする見方や、米民主党と日本政界との人脈の細さに対する懸念もあるようだ。今回は、今後の日米関係、もっと言えば今後の日本外交はどうあるべきかについて論じてみたいと思う。

 日米関係というのは、日米2ヵ国だけではなく、その他の国々も加わった国際社会のパワーゲームに影響される。従って、今回は日米2ヵ国関係の分析は他の識者に任せて、米国以外の日本外交の課題を考えてみたい。

 日本外交の重要課題は、言うまでもなく中国。次にロシア(北方領土問題、資源・エネルギー問題)、インド(自由と繁栄の孤、対中国包囲網)、アフリカ(資源・エネルギー問題、国連安保理常任理事国入りのため)などであろう。そして、結論から先に言えば、これらの国々との外交関係を改善するには、英国と信頼関係を築くことが重要だと考える。

英国に「ヒト・モノ・カネ」を
押さえられている中国

 中国といえば、アフリカ諸国から石油を大量に購入し、アフリカに対する影響力を増大させているようだ。しかし、実は中国のアフリカでの石油購入で最も得をするのは、英国人である。

 アフリカには旧英国植民地が22ヵ国あるが、その石油やその他の鉱物資源の利権はいまだに英国人がしっかりと握っているからだ。その証拠に英国の政治家のスキャンダルは、なぜか遠く離れたアフリカで起こる。「利権あるところに政治家あり」である。

 また、高度経済成長期にある中国にとって鉄鋼生産が重要であるが、鉄鉱石は大手鉱山・金属メジャー3社が、英国系資本の「リオ・チント」「BHPビリトン」と、ブラジル国籍だが英国系資本が買収した「リオドセ」が世界シェアの8割を占めている寡占業界だ。つまり、英国から鉄鉱石を買わないと、中国は鉄を生産できないのだ。

 更に、香港上海銀行(HSBC)がある。HSBCは英国系資本のサッスーン財閥によって香港に創設された「植民地銀行」であり、97年に香港が中国に返還された後も、香港ドルの発券銀行の1つである。香港最大の華人系銀行ハンセン銀行もグループ傘下に収めている。つまり、中国経済を動かす華僑の資金を掌握しているのだ。