なぜ、証言者をたどって根拠を調べていくことをしなかったのか。遺族は、こう疑問をぶつける。

「そういうことをはっきりさせてもらいたいから、第三者委員会に委ねたんです。1年かけて、市教委が言ってたからとか、ユーチューブを取り出したのではないかとか、客観性に欠ける話ばかりですね」

責任の所在を明確にできない検証に意味はある?
遺族が訴えても隠される“真実”

 元々、遺族は市教委との対話によって真相の解明を求めていた。それに対し、外部のコンサルに外注する形で第三者委員会の設置を決めたのは、市教委だった。

 そこに突然、国と県教委が乗り出してきて、公正中立という名のもと、市教委だけでなく遺族も排除された形で、2012年末、同委員会が立ち上がったのだ。

文科省の前川喜平前官房長(現初等中等教育局長)は、「検証に遺族を入れることを相談したのか?」との質問に、「難しいと私自身が判断した」と答えた

 設計当時の責任者である文科省前官房長の前川喜平初等中等教育局長は、遺族を検証委員会に入れなかった経緯を問われて「難しいという私の判断」と答えた。また、会場を見ていて、誰から見ても公正中立な検証と言えるのか?との質問に「確信している」と見解を述べた。

 そんな委員会が、1年の時間と5700万円の予算をかけながら、いったい何を検証したかったのか。

「当時の教職員集団の中で“山に逃げよう”と訴えた先生の意見をどう話し合ったのか。先生方がどう行動したのか。なぜ避難できなかったのか、きちんと盛り込まれましたか?」

 遺族が当初からずっと訴え続けてきた質問に対しては、芳賀繁委員(立教大学現代心理学部教授)がこう答えた。

芳賀繁委員は、「大川小の事実から、類推する様々な要因について掘り下げて対策を提言した。これ以上は解明できないし、仮にわかったとしても他の学校防災には使えない」と独自の検証観を提示した

「誰と誰がどう話し合ったのかはわかりません。結果的に逃げ遅れた事実と1人の先生だけが助かった事実から類推できる様々な要因について掘り下げて、対策を提言しました。これ以上は解明できないし、仮にわかったとしても、他の学校の防災には使えない」

 芳賀委員は、前回の検証委員会の意見交換でも、「属人的」という言葉を使い、「大川小学校の人間関係や校長、教職員など、属人的な要素に深入りすることは、学校防災の教訓を得る上で一般化を妨げる」と話していた。

 日頃の人間関係やパワーバランスが意思決定や避難行動に影響したのであれば、十分に一般的な教訓になると、遺族は強く訴える。

「大川小学校の84人の命が失われたのは、やるべきことができなかったからです。その原因を知ることは大切だと思います。違うでしょうか?」