有料コンテンツモデルは、過去数年、国内のメディア市場を席捲してきたインターネットのポータルサイトの無料コンテンツモデル(広告モデル)に対抗するビジネスとして、育つだろうか――。

 国内初の本格的な有料コンテンツモデルとして、日本経済新聞社が電子新聞「日本経済新聞 電子版(Web刊)」を3月23日付で創刊すると発表し、その行方に、新聞・雑誌といった伝統ある活字メディア各社と、インターネット・メディアがそれぞれの立場から熱い視線を注いでいる。

 もともと情報にカネを払う習慣が乏しいとされる日本の国民に、カネを払ってでも入手したいと思うような情報を提供することができるかどうか、Web刊の成否はこの一点にかかっていると断定してもよいだろう。

 「経済の総合情報機関」日経は当事者として、このチャレンジにいったい、どれぐらいの勝算を持っているのだろうか。電子新聞が既存の新聞の部数を食うカニバリズム(共食い)の懸念はないのだろうか。今回は、Web刊の強みと弱みを検証してみた。

「コンテンツはタダではない」
と意気込む日経・喜多社長

 おそらく、この種の発表としては異例の関心を集めたのではないだろうか。

 東京・大手町の「日経ホール」には、200人前後の記者が詰め掛けて、会場は熱気に溢れかえっていた。出席している記者たちが所属する組織は、あちこちの記者会見を席捲しつつある、インターネットのポータルに軸を置く媒体だけでなく、全国紙や経済雑誌など活字媒体に収益の大半を依存するメディアの方が多いぐらいのように見受けられた。

 そんな中で、冒頭の挨拶に立った日本経済新聞社の喜多恒雄社長は、実に力強い口調できっぱりと「良質なコンテンツは、タダではない」と言い放ってみせた。これは、結構、照れ屋で、普段は、いたずらっ子のような口調で話す、この人にとっては珍しいことだ。社長就任前から、社運を賭けたプロジェクトとして陣頭指揮を執ってきただけに、万感の思いがあったのかもしれない。

 もちろん、発言はそれだけにとどまらなかった。喜多社長は、雄弁に、多くの言葉を費やして、電子新聞にかける意気込みを語った。

 日本では「巨大なネット社会が誕生し、日々の暮らしは便利になった。若い世代にとっては、紙(新聞)よりネットで情報を得ることが常態化している。だが、その情報はホンモノなのか、誰か確認したのかという(危うさが残っている)のが実情だ。(それだけに)、正しい、価値のある情報を、紙で培ったものを活かして、良質なジャーナリズムを提供していくことが、私たちの役割だと考えている」と。