「2009年の運営費600万ドル(約5億5200万円)のために、ぜひみなさんの寄付をお願いしたい」。
昨年、こんな嘆願文をサイト上に載せていたのはオンライン百科事典として知られるウィキペディアである。
初のオンライン百科事典であり、事典の規模として史上最大を誇るウィキペディアは、利用も無料だが、内容を書き込んでいるのも、それを編集するのもボランティアばかり。給料を払ってもいないのに、なぜ600万ドルもの運営費が必要になのか。
そんな人々の懐疑心を反映してか、ウィキペディアのトップページに表示される寄付金メーターは、12月に入っても目標額の半分ほどの地点で止まったままだった。
ところが、事態をすっかり変えたのは創設者ジミー・ウェールズの登場だった。彼は署名入りのレターを掲載して、次のように訴えたのだ。
「ウィキペディアはただのウェブサイトではありません。ここに集う人々はみなひとつの同じ理想を胸に抱いています。それは、地球上の誰しもが全人類の知恵の結集へアクセスできる世界を創造してみよう、というものです。僕たちがコミットしているのは、そんな世界を実現することなのです」。
ウェールズがレターを掲載したのがクリスマスの数日前。その後1日平均21万5000ドルの寄付金が集まり、1月1日には600万ドルの目標をクリアーした。12万5000人の寄付者のほとんどは数10ドルの少額を送った個人だが、中には100万ドルを今後3年に渡って寄付しようと約束した個人篤志家や、25万ドルをポンと出した匿名希望の個人もいるという。
レター1枚でこれだけの金をスピーディーに集めてしまうとは、いかにもジミー・ウェールズのカリスマぶりを物語るエピソードではないだろうか。